ここでは、外国人の無犯罪証明と公証関係についてご説明します。

相談内容

私は日本で働いていましたが、家族でアメリカに行くことになりました。手続の際に、無犯罪証明書、銀行の預金残高証明、サインの証明が必要です。また、卒業証書や職歴等の公証はどうすればよいのでしょうか。

目次

無犯罪証明書(犯罪歴証明書)について

預金残高証明について

サインの証明について

卒業証書(公文書)や職歴等(私文書)の公証

 自国の日本駐在領事の認証

 日本の外務省の認証

 ハーグ条約(認証不要条約)

無犯罪証明とは

公証と認証

 公正証書とは

 認証とは

 ・署名・記名捺印の認証

 ・宣誓認証

外国人が海外で使用するために日本での職歴・学歴等の公証が必要な場合

アポスティーユ(APOSTILLE(付箋による証明))

無犯罪証明書(犯罪歴証明書)について

まず、無犯罪証明書(犯罪歴証明書)については、住民登録をしている都道府県の警察本部の鑑識課(東京都における申請場所は警視庁渡航証明係)で申請します。

提出書類として、
①パスポート
②住民票(発行から6か月以内)
③在留カード
④提出先機関からの証明を要求する文章など(使用目的を証明する書類、移民局のレター等)の4点が必要ですが、犯罪歴証明書の取得には、指紋を採取し、データ照合を行うことから、申請後おおむね2週間が必要です。

また交付された後、提出先以外の開封は無効になりますのでご注意ください。

預金残高証明について

預金残高証明については、取引銀行に、①預貯金通帳、②印鑑、③在留カードを持参の上、申請することができます。

サインの証明について

サインの証明については、自国の在外公館でサインの証明書を申請することができますが、卒業証書(公文書)や職歴等(私文書)の公証については、かなり面倒なので気を付けてください。

卒業証書(公文書)や職歴等(私文書)の公証

自国の日本駐在領事の認証

まず文書の提出先の国によっては、自国の日本駐在領事の認証を求める場合があります。この認証を受けるに当たって、在外公館によっては、その文書に日本の外務省の認証がなければ受け付けないことがあります。

日本の外務省の認証

日本の外務省(外務省領事局領事サービス室証明班)は、各種証明書(公文書)に関しては、押印された公印について確認証明(認証)を行っていますが、私文書については公証人による公証及び(地方)法務局長による公証人の公印証明が付されていれば証明を行っています。

したがって、職歴等の私文書に関しては、内容を証明できる書類等を持参の上、公証役場に出向き、公証人の前で宣誓を行い(宣誓認証された私署証書)、公正証書の作成依頼をするか、作成した履歴書等にサインの認証を受けるかになります。この件に関しては公証役場にてお尋ねください。

ハーグ条約(認証不要条約)

ただし、提出先の国がハーグ条約(認証不要条約)に加盟している場合、アポスティーユ(付箋による証明)の付与が行われ、駐日領事の認証は原則不要となります。この件については、書類提出国の大使館・領事館や公証役場でお確かめください。

無犯罪証明とは

警察証明書とも犯罪歴証明書とも呼びますが、日本でも中国帰国者を除く日系人家族の「定住」申請に「素行が善良であること」の証明に提出が義務付けられています。

アメリカやオーストラリアなどの移民申請や、ヨーロッパなどでビジネス等による長期滞在の査証申請にも、相手国から無犯罪歴証明書の提示を求められる場合があります。

上記ケースのように、自国から直接アメリカへ入国するのではなく、日本に6か月以上居住した後の渡航であれば、日本での素行(刑事罰、行政罰)、生計(経済背景)に対しても、その裏付けとなる無犯罪証明、預金残高証明等の提出が要求されます。

無犯罪証明は、在外公館では警察証明(犯罪歴証明書)とも呼ばれているように、無犯罪を証明するのではなく、犯罪の記録の有無を証明するものです。

提出先によっては、警察証明の代わりとして、申請人自らが「犯罪歴はない」旨を申述文書にし、公証人が署名証明した証書で代用できる場合もあります。

犯罪歴証明書を求められた場合、まずは提出機関に具体的にどのようなものを求めているのか確認してください。

また、不法滞在者が強制送還される場合、その者の国籍国又は市民権の属する国に送還されるのが原則ですが、本国が戦争状態にある、若しくは迫害に遭うなどの何らかの理由により帰国できないときには、送還先を本人の希望により、入国前に居住していたあるいは出生地であるなどの国や地域を、例外として認めています(入管法53条、以下「入管法」という)。

しかし、自らの単なる希望で、他国に出国するための犯罪歴証明書は、申請しても警察は一切受け付けていません。

不法滞在者は、行政処分の対象者であり、入管法70条に該当し、刑事罰として3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金が課せられています。このことからも不法滞在者の場合には、自国に帰国した後、日本大使館・領事館において、犯罪歴証明を申請してください。手続には3か月くらい要しますが、必要書類等は大使館・領事館でお尋ねください。

公証と認証

公証や認証は公証役場で行っていますが、公証人は全国の法務局・地方法務局に所属し、裁判官や検事、法務局長など法務実務の経験の豊かなものの中から、法務大臣によって任命されます。

公証役場での執務は、主に当事者(個人・法人等)の依頼により、法律に定められた方式にのっとった公正証書の作成や認証を行っています。

公正証書とは

公正証書とは、土地建物の売買・賃貸契約や遺言などの証明性の効力を高め、真実性の保証や、金銭消費貸借契約においては強制執行ができるなど、権利の保全等に有利に作用します。

認証とは

行為又は文書が正当な手続・方式に従っていることを公の機関が証明することですが、主に会社設立時の定款の認証(電子認証も行っている)や私署証書の認証を行います。

私署証書の認証には、署名・記名捺印の認証と宣誓認証(Affidavit)があります。

・署名・記名捺印の認証

署名・記名捺印の認証は、当事者が公証人の面前で署名・記名捺印した場合、あるいは署名・記名捺印が自分でしたものであると自認した場合に、公証人が私署証書に付与するものですが、署名・記名捺印の真実性のみの認証がなされます。

当然サインの認証も公証役場で行っています。

・宣誓認証

宣誓認証は、私署証書の作成者本人が、公証人の面前でその証書の記載内容が真実であることを宣誓(例えば、DV法による宣誓供述書)した後(虚偽の宣誓をした場合は過料に処せられる)記名捺印し、又は証書の署名・記名捺印は、自分のものであると自認した場合に、私署証書に付与され、証書に記載された内容の真実性が保証されます。

ただし、提出先機関が公証人(Notary Public)の証明に公的証明(Legalization)を求める場合は、公証人の認証後、
さらに、その公証人が所属する法務局(地方法務局)の長から証明を受け、その公印が間違いないと外務省の証明を受け、そして提出先国の駐日大使館・領事館の-認証印を受けます。

提出先の求める証明が、公証人の公印確認も必要としているのか確認してください。

外国人が海外で使用するために日本での職歴・学歴等の公証が必要な場合

根拠となる卒業証書や以前の給与明細書等を持参の上、公証役場に行き、宣誓による認証や履歴書等の署名の認証を受けることになります。

また、書類の提出先の国によっては、自国の日本駐在領事の認証を求める場合がありますが、その認証を受けることに対し、在外公館の中には、その文書に日本の外務省の認証がなければ受け付けないことがあります。

その場合は、外務省(外務省領事局領事サービス室証明班)に出向き認証を受け、在外公館に行き再度認証を受けてください。

外務省では、海外で使用される日本の各種官公庁・地方自治体ないしそれに準ずる機関の発行した証明書(公文書)に押印された公印について、公印確認の証明の付与を行っていますが、私文書(個人・法人の作成した文書)に関しても、公証役場において、公証人の公証及びその公証人の所属する法務局長又は地方法務局長による公証人押印証明があれば、外務省の認証を受けることができます。

東京都・神奈川県内の公証役場では、申請者の要請により、法務局又は地方法務局の公証人押印証明、外務省の公印確認証明又はアポスティーユが取得できますが、提出先国の領事認証が必要な場合は、外務省での認証の後に、駐日外国大使館(領事館)での領事認証の手続を行ってください。

アポスティーユ(APOSTILLE(付箋による証明))

中国、タイ、マレーシア、ロシア等の国内で日本の公的機関で発行した戸籍謄本や証明書類を使用する場合、日本の外務省の認証印や自国の在外公館の認証印がなければ、結婚等の手続を行う場合でも受理されません。

この書類が真実日本の公的機関発行の文書であると、外務省が公印確認を行い、駐日在外公館の認証があって、初めて有効となりますが、日本、香港、英国、オーストラリア等ハーグ条約(認証不要条約)締約国であれば、外務省や公証役場によるアポスティーユ(付箋による証明)の付与が行われ、駐日在外公館の認証は不要になります。

公証人及び法務局長又は地方法務局長の公印証明が付されていれば、証明を行っています。