出国命令制度は、不法残留者が出国の意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭し、不法残留以外の退去強制事由に該当しない、懲役又は禁錮に処せられたものでない、過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがない、 速やかに出国することが確実と見込まれる場合、適用されます。

相談内容

私は15年ほど前に留学生で来日しました。すぐに不法滞在となりましたが、まじめに働いてきました。でも限界となり、家族にも会いたいですが、どうすれば良いですか?

目次

不法残留者の出国命令制度による出国

不法残留者(オーバステイ)とは

退去強制とは

出国命令制度(入管法24条の3)について

不法残留者の出国命令制度による出国

平成16年の入管法改正により、不法滞在者を対象にした出国命令制度ができました。不法滞在者は強制退去の対象者ですが、一定の条件をクリアすることができれば、この制度により身柄を拘束されることなく、簡易な手続により帰国ができます。

出国命令対象者は、不法残留者(入管法第24条第2号の4、第4号ロ又は第6号から第7号までのいずれかに該当する外国人)であることが前提ですが、加えて、

(1) 出国の意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭したこと

(2) 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと

(3) 窃盗罪等の一定の罪により懲役又は禁錮に処せられたものでないこと

(4) 過去に本邦から退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと

(5) 速やかに本邦から出国することが確実と見込まれること

の全ての要件を満たしていることが必要です。

簡単に説明しますと、いわゆるオーバーステイ(超過滞在者)である不法残留者が自ら出頭し、不法残留以外の法律違反もなく、過去に強制退去を受けたこともなく、帰国審査の後は航空券・パスポートを自ら用意し、速やかに立ち去ることができる者を対象としていることです。

上記の場合、留学生で入国していることは、不法残留者にあたり、まじめに働いていたことなどから、窃盗等の罪もないでしょう。

パスポートは有効期限が切れている可能性がありますが、航空券の代金など帰国費用に問題はないでしょうから、該当する可能性は高く、自主的に出頭しましょう。

出国命令による帰国は、15日を超えない範囲で出国期限を定める(入管法55条の3)としていますので、出頭後2週間ぐらいで帰国が可能です。

出国命令制度は、出国命令書を交付されれば、出国期限内に自主的に出国できる制度です。その上、再上陸期間が1年ですから、再来日の可能性もあります。

パスポートの有効期限が過ぎている場合は、出頭後、入管作成のリーフレットを提示して、自国の大使館で速やかに渡航書の申請をしましょう。

チケットを持参する場合は、オープンチケットにするか、日程が分かってから購入することもできます。

出頭する場合には、旅券を持参してください。旅券を紛失するなどして所持していない方は、身分を明らかにする証明書があれば持参してください。

帰国を希望する場合は、有効な旅券を持参してください。また、旅券のほかに、帰国のための航空券や旅行代理店が発行した航空券予約確認書が必要となりますが、不法残留等の状態や他の法令に違反している場合には、調査に時間を要し、事前に準備していた航空券が使用できなくなることも考えられますので、まずは、お近くの地方出入国在留管理官署に出頭した上で、お問い合わせください。

とにかく自主出頭が大切です。詳しくは、出入国在留管理局あるいは外国人在留総合インフォメーションセンターにお尋ねしましょう。

不法残留者(オーバステイ)とは

「不法残留者」は、正規の在留資格を持たずに、不法に日本で生活し、滞在している外国籍の人たちの総称として使われていますが、不法な手段で上陸や入国して非正規に働いている人たちと、正規に入国したにもかかわらず、現在は不法な滞在になっている人たちを区別して、前者を不法在留者とし、不法在留罪が設けられています。

後者を不法残留者として、出国命令制度の対象者でもありますが、どちらも不法滞在における罰則規定の対象者であって、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられ、退去強制の対象であることに違いはありません。

そのため不法残留者に一定に要件を課し、自主出頭した場合に、出国命令の対象としています。

退去強制とは

外国人が日本の領土に上陸する場合、上陸審査官の審査により、上陸把拒否事由に該当すれば、入国拒否により、その外国人は日本の領土内に入ることができません。

また、上陸後に日本社会の秩序や出入国在留管理の秩序を乱すなど、日本国にとって好ましくないと認められる一定の外国人を、法律で定めた(入管法24条)所定の手続に基づき、日本からの退去を強制することができます。

入管法24条には、強制的に退去させるべき者の事由を詳細かつ具体的に列挙しています。

不法入国、不法在留、不法残留、麻薬や売春はいうに及ばずですが、アルバイトなどの資格外活動も専ら行っていると認められる行為があった場合、在留資格の取消しの告知を受けた者、及び在留の申請手続上に偽変造文書の使用なども含まれます。

出国命令制度(入管法24条の3)について

出国命令制度は、不法残留者(合法入国)を対象として、出入国在留管理局への自主出頭を第一の条件として、パスポートの期限が切れていても、自国の大使館が速やかに渡航書を出してくれること、帰国の旅費の確保ができていることなど、速やかに確実に日本から出国することが求められています。

そのため、全ての準備が整ってから、パスポート等を持参して審査を受けましょう。

パスポートが切れている場合は、入管作成のリーフレット(帰国するためのパスポート若しくは渡航書等を出すための依頼書)を受け取り、パスポートなどを入手した後、速やかに出頭することです。

入国警備官の違反審査により、出頭者(容疑者)が出国命令対象者であると認められる相当の理由がある場合、収容されることなく入国審査官に引き継がれ、入国審査官が出国命令の対象者と認定した場合、主任審査官から15日を超えない範囲で、出国期限を決定し、出国命令書が交付されます。

この場合の帰国は自主的に出国ができますが、期限内に出国しない場合は、退去強制の対象となります。この制度で帰国できた場合、上陸拒否期間は5年ではなく1年となります。