ここでは、外国人が働く前の基礎知識についてご説明します。

目次

1.在留資格

 ・在留資格で定められた範囲で就労できる在留資格

 ・原則として就労が認められない在留資格

 ・就労活動に制限のない在留資格

2.働く形態

 (1)派遣労働者(派遣社員

 (2)契約社員(有期労働契約の社員)

 (3)パートタイム労働者

 (4)業務委託(請負)契約を結んで働いている人

3.労働契約

 (1)「労働者」の範囲

 (2)労働条件の明示

 労働契約の禁止事項

 労働条件が契約したときの約束と違う場合は

4.賃金

 (1)最低賃金とは

 (2)最低賃金の特徴

 (3)休業手当

1.在留資格

外国人は、許可された在留資格の範囲内で、日本で活動することが認められています。就労できるかどうかに着目してみると、大きく次の3種類に分けられます。

・在留資格で定められた範囲で就労できる在留資格

外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー、EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士など)

・原則として就労が認められない在留資格

文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在

・就労活動に制限のない在留資格

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者

2.働く形態

(1)派遣労働者(派遣社員)

・派遣とは、次のような働く形態のことをいいます。

①労働者は、派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結びます。(派遣会社が雇用主になり、賃金を支払います。)

②労働者は、派遣会社が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に派遣されます。

③労働者は、派遣先の指揮命令を受けて働きます。

・労働者派遣法において、派遣労働者を守るために、派遣会社や派遣先が守らなければならないルールが定められています。

・派遣で働いてトラブルが起こった場合は、派遣会社と派遣先に、それぞれ相談を受ける担当者がいますので、相談できます。

・派遣で働く場合、労働基準や安全衛生に関する事項も含めて、派遣会社と派遣先との間で責任が分担されています。

(2)契約社員(有期労働契約の社員)

・契約社員とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者のことです。

・あらかじめ契約期間が定められている労働契約を結んだ場合、契約期間の満了によって、契約そのものも自動的に終了します。
ただし、労働者と会社が合意して労働契約を締結し直し(更新し)、契約期間を延長することもできます。

・1回当たりの契約期間は(一定の場合を除き)最長3年です。

(3)パートタイム労働者

・パートタイム労働者とは、同じ事業主に雇用されている通常の労働者(いわゆる「正社員」)と比べて、1週間の所定労働時間(※)が短い労働者のことです。

例えば、「パートタイマー」「アルバイト」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件を満たす労働者は、パートタイム労働者です。

(※)1週間の所定労働時間とは、就業規則等で定められた始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた労働時間を指します。

・パートタイム労働者も各種労働法が適用されます。そのため、要件を満たしていれば、

①年次有給休暇を取得できます。

②雇用保険や健康保険、厚生年金保険が適用されます。

・会社は、労働者を雇い入れる際に、次の義務があります。

①労働条件を明示すること。

②特に重要な条件6つについては、原則として文書を交付すること(1-3(2)参照)。上記に加えて、パートタイム労働者や契約社員(有期労働契約の社員)の場合は、「昇給の有無」「賞与(ボーナス)の有無」「退職手当の有無」「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」についても、原則として文書の交付により明示しなければなりません。

詳細は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)又は総合労働相談コーナーに問い合わせてください。
※都道府県別のページ又は雇用環境・均等部(室)所在地一覧をご覧ください。

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(4)業務委託(請負)契約を結んで働いている人

原則

「業務委託」や「請負」といった名称で働く場合には、注文者から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われるというものなので、注文者の指揮命令を受けない「事業主」として扱われ、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできません。

例外

ただし、「業務委託」や「請負」といった名称で契約をしていても、その実際の働き方から注文者の指示を受けていて「労働者」であると判断されれば、「労働者」としての保護を受けることができます。

・「労働者」であるかどうかの判断について困ったときは、労働基準監督署に相談してください。

3.労働契約

(1)「労働者」の範囲

・「労働者」とは、使用者の指揮命令の下で働き、その報酬として賃金を受ける人をいい、労働基準法などの一部の労働法の保護を受けることができます。

・「労働者」であるか否かは、職種を問いません。正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトも、一般的には「労働者」です。

(2)労働条件の明示

・労働者が賃金や労働時間などの労働条件についてよく理解しないまま働き始め、後に会社とトラブルになるということのないよう、日本の労働基準法(働くことに関する法律の一つ)では、労働契約を結ぶときには、会社が労働者に対して労働条件についてきちんと明示することを義務としています。

・特に重要な次の項目については、会社は労働者に原則として書面を交付することで明示しなければいけないことになっています。(例外的に、労働者本人が希望する場合には、FAXや電子メールなど(出力して書面が作成できるものに限る)による明示もできます。)

・これら以外の労働契約の内容についても、労働契約法により、使用者と労働者はできる限り書面で確認する必要があると定められています。

労働契約の禁止事項

労働基準法では、使用者が労働契約に盛り込んではいけない事項も定めています。

1.労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、損害賠償額をあらかじめ決めておくこと.
これは、違約金を定めたり、あらかじめ損害賠償の金額について定めておくことを禁止するものです。

そのため、損害賠償の金額を約束せず、労働者の故意や不注意による現実に生じた損害について、会社が賠償を請求することは、禁止されていません。

2.労働することを条件として、労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること

3.労働者に強制的に会社にお金を積立てさせること
積立ての理由は関係なく、社員旅行など労働者の福祉のためでも、強制的に積立てさせることは禁止されています。ただし、労働契約とは関係なく、労働者の意思に基づき貯蓄金の管理を会社に委託することについては、一定の条件の下で認められています。

労働条件が契約したときの約束と違う場合は

・実際に働き始めて、労働条件が契約したときの約束と違うことに気付いたら、労働者はそのことを理由として、すぐに労働契約を解除することができます。

・労働条件は、労使で結ぶ労働契約や会社の就業規則などによって決まっており、その最低基準は労働基準法で定められています。(労働基準法で定める基準に達しない労働条件については無効となり、無効となった部分は労働基準法で定める基準によることになります。)

・実際に働き始めた後で、会社が労働者の同意なく一方的に、労働者にとって不利益な労働条件に変更することは原則としてできません。

4.賃金

(1)最低賃金とは

最低賃金法によって定められている、会社が支払わなければならない賃金の最低額のことです。

(2)最低賃金の特徴

①働き方の違いにかかわらず全ての労働者に適用されます。

②最低賃金を下回る労働契約は無効です。もし、会社に頼まれて契約したとしても、その契約は無効となって【最低賃金との差額】×【働いた時間分】を後から請求することができます。

(3)休業手当

会社の責任で労働者を休ませた場合

労働者の最低限の生活の保障を図るため、会社は平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。したがって、会社の責任によるものである場合、一定程度の給料は保障されます。