ここでは、永住と帰化の違いや日本国籍を取得するための手続きについてご説明します。
目次
永住と帰化はどう違うのか?
帰化とは、一定の条件を満たした外国人に対して、法務大臣が日本国籍の取得を認めることをいいます。帰化が認められ、日本国籍を取得することで、在留期間に限定されずに、長期間に渡って日本に滞在することができます。
日本に継続的に滞在し、働くなどして生活を営むことを希望する外国人が増加していますが、日本国籍を取得することによって、外国人は原則として、本国での国籍を失うことになります。
そこで、本国での国籍を維持したままでも、日本に長期間に渡って滞在する方法があります。
具体的には、「永住者」としての在留資格を取得することによっても、帰化した場合同様に、在留期間の制限はありませんので、継続的に日本で滞在することが可能です。
また、「永住者」の在留資格は、就労に関する制限も基本的にありませんので、日本の会社などで働きながら、日本で生活を営むことが可能です。
もっとも、在留資格としての「永住者」と、帰化申請が認められた者との間には、大きな差があります。
たとえば、在留資格としての「永住者」は、在留期間の制限はありませんが、在留資格が取り消されるなどした場合には、日本に滞在する根拠を失うことを意味します。場合によっては退去強制の対象に含まれるケースもあります。
これに対して、帰化が認められた者については、日本国籍を取得することになりますので、在留資格の取消しなどの対象に含まれることはありません。
また、外国人が、公務員などの職に就くことを希望する場合に、日本国籍の取得者のみが就任を認められる場合があります。この場合には、帰化する必要があります。
帰化の条件が緩和される場合
帰化申請を行う外国人は、一定の条件を備えている必要がありますが、以下の外国人については、より緩和した条件の下で、帰化申請が認められます。
・日本と特別の関係にある外国人
・日本人の配偶者
・日本人の子や養子
・日本国籍を失った者
・日本人の子・養子や日本国籍を失った者など
具体的には
①継続して5年以上日本に住所がなくても帰化申請が可能な者
・日本人であった者の子(日本に住所・居所がある者)
・日本で生まれた子(日本に3年以上住んでいる者)
・10年以上日本に居所がある者
②日本人の配偶者
・3年以上日本に居所・住所があり、現在も日本に住所がある場合には帰化申請が可能
・婚姻日から3年経過しており、1年以上日本に住所を持つ者は帰化申請が可能
③住所・能力・生計に関する条件を満たしていない場合でも帰化申請可能な者
・日本人の子(日本に住所を持つ者)
・日本人の養子(1年以上日本に住所をもち、養子縁組成立時に未成年者であった者)
・日本国籍を失った者
・日本で出生時に国籍を持たない者(日本に3年以上住所を持つ者)
帰化許可申請の条件とは
帰化の申請は、必ずしも認められるわけではありません。法務大臣に対して、比較的広い裁量が認められています。ただし、国籍法により、おもに以下の6つの一般的な条件があります。
①住所に関する条件
適法な在留資格に基づき、5年以上継続して日本に住んでいることが必要です。
②能力に関する条件
年齢が18歳以上で、本国においても成人年齢に達していることが必要です。なお、15歳未満の子どもについては、両親が法定代理人として、帰化許可申請手続きを行うことになります。
③素行に関する条件
素行が善良であることが必要であり、犯罪歴の有無、納税状況などさまざまな要素を総合的に考慮して判断が行われます。
④生計に関する条件
申請者自身の収入の他、配偶者などの収入なども含めて、安定して日本で生活を継続できることが必要です。
⑤二重国籍防止に関する条件
原則として、帰化によって本国に有していた国籍は失われます。
⑥憲法遵守に関する条件
日本政府を破壊する目的の団体に加入していないことなどが必要です。
なお、以上の条件を満たす場合であっても、実際に帰化許可申請を行った後に、実際に許可を受けるまで、約1年程度の時間がかかります。
帰化許可申請にあたり、申請料などを支払う必要はありません。
また、一度帰化許可申請を行った結果、不許可の認定を受けた場合であっても、再度申請することも可能です。ただし、その場合には、以前の申請でなぜ不許可になったのかを確認した上で、再申請を行わなければ、再び不許可認定を受けるおそれがある点に留意する必要があります。
帰化許可申請に関して問題になるケース
実際に帰化許可申請を行う上で、問題になるケースとして、以下のようにいくつかの場合が挙げられます。
・過去に犯罪歴などがある場合
過去に犯罪歴などがある外国人は、帰化許可申請のための条件である「素行に関する条件」を満たさないおそれがあります。特に、人を殺してしまったなどの重大な犯罪歴がある場合には、一般に帰化許可申請が認められることは困難です。
もっとも、スピード違反などの交通違反を犯した経験がある場合などには、その時期や回数などを考慮した上で、帰化許可申請が認められるケースもあります。
・家族のうち一部の者のみが帰化許可申請を行う場合
たとえば、家族のうち、子どもについてだけ帰化許可申請を行い、両親(あるいは片親のみ)は本国の国籍を残したままにしておきたいと望むケースも少なくありません。
帰化許可申請にあたって、必ずしも家族全員で行わなければならないという規定が設けられているわけではありません。つまり、子どもが日本国籍を取得した後でも、両親は在留資格に基づく在留期間が満了した後に、在留期間の更新が認められなかった場合、本国に帰国する必要があります。
しかし、帰化許可申請にあたり、「生計に関する条件」が設けられているため、両親が本国に帰国する可能性がある以上、日本で安定した生活を営むことができる保証がないため、子どもの帰化許可申請手続きにおいて、不利に働くおそれがあることに注意が必要です。
・日本を離れている期間が長い場合
帰化許可申請において、「住所に関する条件」として、継続して5年以上日本に滞在していることが要求されています。
しかし、日本に滞在し、日本の会社で勤務している者であっても、場合によっては、1年のうち、そのほとんどが海外出張などのため、日本を離れている場合も考えられます。
このようなケースでは、日本国籍の取得が困難な場合があります。絶対的な基準があるわけではありませんが、1年間のうち、約100日以上は海外出張のために日本を離れているというケースにおいては、帰化許可申請が認められない場合が多いといえます。
どんな書類が必要なのか?
帰化を望む外国人は、おもに以下の書類をそろえて申請する必要があります。
・帰化許可申請書
・視族などの概要を記載した書類
・親族関係を証明する書類
・履歴書
・在留暦を証明する書類
・生計に関する書類
・事業を行っている場合にはその概要に関する書類
・住民票(写し)
・国籍を証明する書類
・納税に関する事項を証明する書類
・収入に関する事項を証明する書類
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