ここでは、日本で暮らす外国人の方々に、所得税の計算方法、納税方法、所得控除などについてご説明します。

目次

所得税の計算

1.納税義務者と課税の対象となる所得の範囲

(1)居住者

(2)非永住者

(3)非居住者

2.所得税の確定申告と納税

(1)確定申告が必要な人

  納付方法

(2)確定申告をすれば所得税が戻る人

(3)確定申告及び納税の期限

(4)日本から出国する場合

3.主な所得控除

(1)親族を扶養している場合

(2)配偶者がいる場合

(3)社会保険料を納めた場合

(4)生命保険料などを支払った場合

(5)医療費を支払った場合

4.源泉徴収と年末調整

5.租税条約による特例

所得税の計算

所得税は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた個人の所得にかかる税金です。

①収入-経費など=所得金額(A)

②所得金額(A)-いろいろな控除=課税所得金額(B)

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③課税所得金額(B)×税率

税率は、課税所得金額(B)が多くなるほど段階的に高くなる仕組みとなっています。

1.納税義務者と課税の対象となる所得の範囲

次の居住の形態区分に応じて、所得税の対象となる所得の範囲が異なります。

(1)居住者

日本国内に「住所」がある人、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」がある人
((2)非永住者は除きます)
該当する人を「居住者」といいます。

→国外源泉所得を含む全ての所得が所得税の対象となります。

「住所」と「居所」

・「住所」とは、個人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは、客観的事実(日本で就労しているかどうか、配偶者その他の生計を一にする親族が日本に住んでいるかどうかなど)によって判定します。

・「居所」とは、人が相当期間継続して居住する場所であるが、生活の本拠という程度には至らないものをいいます。

(2)非永住者

「居住者」のうち、日本の国籍がなく、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所があった期間の合計が5年以下である人該当する人を「非永住者」といいます。

→①国外源泉所得以外の所得と、②国外源泉所得で、国内において支払われたもの又は国外から送金されたものが所得税の対象となります。

(3)非居住者

「居住者」、「非永住者」以外(外国に住所がある人など)の人を「非居住者」といいます。

→日本国内で勤務した給与や、日本国内での人的役務の提供に起因する報酬などの、国内源泉所得のみが所得税の対象となります。

2.所得税の確定申告と納税

所得税は、その年に生じた所得の金額とそれに対する所得税の金額を自分で計算して、申告期限までに税務署に確定申告書を提出し、源泉徴収された所得税などとの過不足を精算します。この手続を「確定申告」といいます。

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(1)確定申告が必要な人

給与の支払を受けている人については、その大部分は、所得税等が源泉徴収された後、年末調整によって精算されるため、確定申告は不要です。

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ただし、次のような人は、確定申告を行う必要があります。

・給与の支払を1か所から受けていて、かつ、給与所得や退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人

・2か所以上から給与の支払を受けていて、かつ、年末調整をされなかった給与の収入金額と、給与所得や退職所得以外の所得の金額との合計額が20万円を超える人

・給与以外の事業や株取引などにより所得を得ており、所得税の計算の結果、税金がかかる人 など

なお、確定申告により納める税金がある人は、期限までに納税者が自分で納付する必要があります(税務署から納付に関する通知などはありません。)。

納付方法

納付には、次の方法があります。

①現金での納付(コンビニエンスストアや銀行、郵便局、税務署の窓口)

②口座振替

③インターネットバンキングやダイレクト納付

④インターネット上でのクレジットカード納付

(2)確定申告をすれば所得税が戻る人

・所得控除があることなどにより、源泉徴収された所得税などが納め過ぎになっている場合には、確定申告により所得税が還付されます。郵便局や銀行口座への振込によって受け取ります。

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・源泉徴収などによって納め過ぎた所得税がない場合には、還付される所得税はありません。

(3)確定申告及び納税の期限

各年分の所得税について、確定申告の相談及び申告書の受付は、翌年の2月16日から3月15日までです。
※税務署の閉庁日(土・日曜・祝日等)は、原則として、税務署での相談及び申告書の受付は行っておりません。

所得税の確定申告分の納税の期限は、3月15日です。
※この期限(3月15日)が、土・日曜・祝日等に当たる場合は、翌日以降の平日が期限となります。

(4)日本から出国する場合

・日本に住所及び居所がなくなる場合、原則として出国前にその年の給与について年末調整を受けることになります。

・(1)のように確定申告が必要となる場合には、出国前に確定申告及び納税を行う必要があります。

・出国した後で、確定申告や納税などの手続を行う必要がある場合には、日本国内に居住する納税管理人を選び「納税管理人の届出書」を所轄税務署に提出してください。出国後に納税管理人が本人に代わって手続を行うことになります。

3.主な所得控除

各個人の事情を考慮し、次に当てはまる場合には、所得税の計算上、一定の金額を控除します。

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なお、非居住者(1-1(3)参照)である場合には、適用できる控除の種類が限定されます。

(1)親族を扶養している場合

・親族を扶養している場合で、扶養されている人の合計所得金額が48万円以下(2019年以前は38万円以下)であるなど一定の要件を満たす場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。

・扶養している親族が、非居住者である場合には、「親族であることがわかる書類(戸籍の写しなど)」及び「扶養していることがわかる書類(金融機関から送金した際の書類など)」を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際に提示する必要があります。

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(2)配偶者がいる場合

・配偶者がいる場合で、一定の要件を満たす場合には一定の金額の所得控除を受けることができます。

・配偶者が、非居住者である場合には、「配偶者であることがわかる書類(戸籍の写しなど)」及び「扶養していることがわかる書類(金融機関から送金した際の書類など)」を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際に提示する必要があります。

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(3)社会保険料を納めた場合

自分又は生計を一にする配偶者やその他の親族の社会保険料(健康保険・国民年金・厚生年金保険など)を納めた場合には、その納めた金額について所得控除を受けることができます。

(4)生命保険料などを支払った場合

自分が一定の生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。

(5)医療費を支払った場合

自分又は生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額に応じた所得控除を受けることができます。

4.源泉徴収と年末調整

・給与の支払を受けている外国人は、雇用主から給与の支払を受ける際に、所得税が差し引かれる(源泉徴収される)ことになります。

・その年最後に給与の支払を受ける際に所得税の精算(年末調整)が行われます。

・給与の支払者から、その支払金額等を記載した「源泉徴収票」が給与の支払を受ける人に交付されることとなっています。

5.租税条約による特例

出身国と日本との間で租税条約が締結されている場合には、一定の要件を満たすことにより、所得税が軽減又は免除されることがあります。