育児休業(育休)は、性別を問わず、配偶者が専業主婦(夫)でも、夫婦同時でも取得できます。

出⽣時育児休業(産後パパ育休)は、男性の育児休業取得を促進する制度です。なお、養⼦の場合等は⼥性も取得できます。

育休と産後パパ育休は、配偶者が専業主婦(夫)でも取得でき、休業中には、給付の⽀給や社会保険料免除があります。

目次

Ⅰ 令和4年(2022年)4月1日施行の内容

 1 個別の制度周知・休業取得意向確認と雇用環境整備の措置

 1-1 本人又は配偶者の妊娠・出産等の申出をした労働者に対する個別の制度周知・休業取得意向確認の措置

 FAQ(よくある質問と回答)

 1-2 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の措置

 FAQ(よくある質問と回答)

 2 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

Ⅱ 令和4年(2022年)10月1日施行の内容

 1 出生時育児休業(産後パパ育休)と育児休業の分割取得の改正概要

 2 出生時育児休業(産後パパ育休)

 [1]制度概要

 [2]出生時育児休業(産後パパ育休)の申出期限を1か月前までとする労使協定

 [3]出生時育児休業(産後パパ育休)期間における休業中の就業

 FAQ(よくある質問と回答)

 3 育児休業の分割取得など育児休業の改正内容

 [1]1歳までの育児休業

 [2]1歳以降の育児休業

Ⅲ 令和5年(2023年)4月1日施行の内容

 1 育児休業取得状況の公表の義務化

Ⅳ 育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止・ハラスメント防止

 ハラスメントの典型例

 FAQ(よくある質問と回答)

都道府県労働局雇用環境・均等部(室)窓口一覧

Ⅰ 令和4年(2022年)4月1日施行の内容

1 個別の制度周知・休業取得意向確認と雇用環境整備の措置

1-1 本人又は配偶者の妊娠・出産等の申出をした労働者に対する個別の制度周知・休業取得意向確認の措置

義務
本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業取得の意向確認の措置を、個別に行わなければなりません。

(1)配偶者には、事実婚も含みます。

(2)妊娠・出産等の申出は、「妊娠・出産」に準ずる以下の事実を事業主に申し出ることも、ここでの「申出」に当たります。

・労働者が特別養子縁組に向けた監護期間にある子を養育していること、養育する意思を明示したこと

・労働者が養子縁組里親として委託されている子を養育していること、受託する意思を明示したこと

など

(3) 日々雇用される者を除き、有期雇用労働者も個別周知・意向確認の対象となります。ただし、子の年齢が育児休業の対象年齢を既に超えている場合等、育児休業を取得する可能性がない場合は、育児休業の制度の対象とはならない旨の説明を行えばよく、意向確認は不要です。

(4)個別周知・意向確認の措置の方法

・ 面談は、オンライン面談も可能です。(ただし、対面で行う場合と同程度の質が確保されることが必要です。
音声のみの通話などは面談による方法に含まれません。)

・ 電子メール等による場合は、労働者と事業主が送信する情報を出力して書面を作成できるものに限ります。
また、電子メール等には、例えば、イントラネット(企業内LAN)、webメール(Gmail等)、SNS(LINE、
Facebook、メッセンジャー等)が含まれます。

※育児休業の取扱通知書の交付等、育児・介護休業法における電子メール等の考え方は上記と同じです。

(5) 労働者が希望の日から円滑に育児休業を取得することができるように配慮し、適切な時期に実施することが必要です。具体的には以下のとおりです。

(6) 個別周知と意向確認は、育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の申出が円滑に行われるようにすることが目的です。取得を控えさせるような形で行ってはいけません。

取得を控えさせるような形とは

取得を控えさせるような形での措置の実施としては、取得の申出をしないよう威圧する、申し出た場合の不利益をほのめかす、取得の前例がないことをことさらに強調するなどの様態が考えられます。

(注) 仮に上記のような取得を控えさせるような形で措置が行われた場合は、法令で定める措置を実施したものとは認められません。この「取得を控えさせるような形で(の)措置」に該当するかは、実施された措置の特定の場面に限らず、全体として取得を控えさせる効果を持つかどうか、という観点から、実質的に判断します。

(例えば、一度取得を控えさせるような言動があった後に、別途そうした言動を行わずに個別の周知、意向確認の措置が改めて行われた場合であっても、当初の言動についての訂正がなく、実施された措置全体としては、取得を控えさせる効果があると認められるような場合には実質的に取得を控えさせるような措置が行われているものと判断され、法で定める措置を実施したものとは認められません。)

留意
意向確認の措置は、事業主から労働者に対して、意向確認のための働きかけを行えばよいものです。
※面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかの措置を行えばよいことを意味しています。
また、意向には、取得希望の有無のほか、「取得するかわからない」というものも含まれます。

望ましい
妊娠・出産等の申出が令和4年10月より前に行われた場合でも、子の出生が令和4年10月以降に見込まれるような場合には、出生時育児休業(産後パパ育休)制度も含めて周知することが望ましいです。

留意
出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業の仕組みを知らせる際には、育児休業給付と育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の社会保険料免除について、休業中の就業日数次第でその要件を満たさなくなる可能性があることをあわせて説明するよう留意してください。

FAQ(よくある質問と回答)

Q 子どもが生まれるすべての労働者に個別の周知・意向の確認を実施する必要がありますか。

A 本人又は配偶者が妊娠又は出産した旨等の申出があった場合に、実施する必要があります。

Q 個別周知・意向確認を面談で行う場合、実施した内容を記録する必要はありますか。

A 記録する義務はありませんが、面談の場合は、その他の書面を交付する方法や電子メールの送信方法等と異なり、記録が残らないため、必要に応じて記録を作成することが望ましいです。

Q 妊娠・出産等の申出は口頭でよいですか。

A 法令では、申出方法を書面等に限定していないため、事業主において特段の定めがない場合は口頭でも可能です。(※)
事業主が申出方法を指定する場合は、申出方法をあらかじめ明らかにしてください。仮に、申出方法を指定する場合、その方法については、申出を行う労働者にとって過重な負担を求めることにならないよう配慮しつつ、適切に定めることが求められますので、例えば、労働者が当該措置の適用を受けることを抑制するような手続を定めることは、認められません。

また、事業主が指定した方法によらない申出があった場合でも、必要な内容が伝わるものである限り、措置を実施する必要があります。

※ 口頭による申出の場合でも措置を実施する必要がありますので、円滑な措置の実施のために、例えば、あらかじめ社内で申出先等を決めておき、その周知を行っておくことが望ましいです。

1-2 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の措置

義務
育児休業と出生時育児休業(産後パパ育休)の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません。

① 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する研修の実施

② 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

③ 自社の労働者の育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)取得事例の収集・提供

④ 自社の労働者へ育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

※出生時育児休業(産後パパ育休)は、令和4年10月1日から対象。

育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)を取得しやすい雇用環境整備は、男女とも対象に実施してください。

①研修

全労働者を対象とすることが望ましいですが、少なくとも管理職は、研修を受けたことがある状態にしてください。

②相談体制の整備

相談窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知することを意味します。窓口を形式的に設けるだけでなく、実質的な対応が可能な窓口を設けてください。また、労働者に対する窓口の周知等を行い、労働者が利用しやすい体制を整備してください。(下のFAQもご参照ください。)

③自社の育児休業取得の事例提供

自社の育児休業の取得事例を収集し、これらの事例を掲載した書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者が閲覧できるようにすることを意味します。提供する取得事例が特定の性別や職種、雇用形態等に偏らないよう、可能な限り様々な労働者の事例を収集・提供し、特定の者の育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮してください。

④制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

育児休業に関する制度と育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することを意味します。

留意
措置を講じる際は、短期はもとより1か月以上の長期の休業の取得を希望する労働者が、希望するとおりの期間の休業を申出・取得できるように配慮してください。

望ましい
可能な限り、複数の措置を行うことが望ましいです。

FAQ(よくある質問と回答)

Q 相談体制の整備は、メールアドレスやURLを定めて相談窓口として従業員に周知を行う対応でもよいでしょうか。

A 実質的に相談に対応できる体制を整えていれば、必ずしも物理的な窓口設置に限られずメールアドレスやURLを定めて相談窓口として周知する方法も可能です。

Q 出向者に対する個別周知・意向確認、雇用環境整備の措置は、出向元・出向先どちらの事業主が行うべきですか。

A 育児休業に関する雇用管理を行っている事業主が行うべきものです。なお、いわゆる移籍出向者(出向元との間に労働契約関係が存在しない)と、いわゆる在籍出向者の育児休業の取得についての解釈は、以下の通りです。

・移籍出向者に対しては、出向先の事業主が行う

・在籍出向者に対しては、賃金の支払い、労働時間管理等が出向先と出向元とでどのように分担されているかによってそれぞれケースごとに判断する

2 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

義務
期間を定めて雇用される労働者(有期雇用労働者)の育児休業と介護休業の取得要件が緩和されます。

育児休業の取得要件の「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」については、改正前から変更ありませんが、判断のポイントは以下のとおりです。(介護休業も同様です。)

・育児休業の申出があった時点で、労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。

・事業主が「更新しない」旨の明示をしていない場合は、原則として「労働契約の更新がないことが確実」とは判断されません。

Ⅱ 令和4年(2022年)10月1日施行の内容

1 出生時育児休業(産後パパ育休)と育児休業の分割取得の改正概要

【コラム】出生時育児休業(産後パパ育休)の活用

育児休業中の健康保険料と厚生年金保険料の労働者負担分会社負担分ともに免除されますが、年金等の給付額は保険料が支払われたものとして計算されます。申請は会社を通じて行います。

事業主から賃金が支払われた場合は、雇用保険料の負担が必要です。

・ 出生時育児休業(産後パパ育休)は、男性の育児休業取得促進のために、男性の育児休業取得ニーズが高い子の出生直後の時期に、これまでの育児休業よりも柔軟で休業を取得しやすい枠組みとして設けられました。

・ 出生時育児休業(産後パパ育休)を育児の入り口と位置づけ、育児の大変さや喜び等を男性自身が実感することで、その後の育児への関わり方、更なる育児休業の取得や休業後の働き方の見直しにつなげましょう。

・ 自分が休むと業務に支障があるのではないか等、長期の育児休業取得に不安がある方は、まずは出生時育児休業(産後パパ育休)で短期間の休業を試してみてから、長めに育児休業を取得するというような活用もできます。

・「 育児休業中に何をすればよいかわからない」「休業しても自分ができることはないから休業しない」というような労働者の意識を変えるために、企業側から自治体等が開催する両親学級への参加を促すことも有効です。(両親学級を土日に実施したり、オンラインで実施する自治体も増えています。)
子どもが生まれる前に、子どもが生まれたら何をするのか知る、休業中の役割分担に関して夫婦で話し合う等の準備をしておくことがポイントです。労働者が育児を経験することは、効率的な時間の使い方や視野の広がり等仕事にも活かせることがありますので、企業から労働者へ両親学級への参加や夫婦間の話し合い等の事前準備を働きかける意義、メリットはあると考えられます。

・ また、育児と仕事の両立に関する企業の方針、取組(休業前後の面談、休業中の情報提供、職場復帰前後の研修、キャリア開発等)を示すことは、「育児休業がキャリアに支障をきたすのではないか」という労働者の不安を払拭するために有効です。

改正後の働き方・休み方のイメージ(例)

2 出生時育児休業(産後パパ育休)

義務
出生時育児休業(産後パパ育休)は、育児休業とは別に取得できます。
従来の育児休業と同様、労働者が容易に取得できるように、事業所にあらかじめ制度を導入し、就業規則の整備等必要な措置を講じなければなりません。

[1]制度概要

留意
育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)を円滑に取得するために重要なこと
【事業主】休業の申出期限にかかわらず労働者が円滑に申出できるように雇用環境の整備を行うこと。
【労働者】 業務の円滑な引き継ぎ等のためには、早めに申し出ることが効果的であるという意識を持つこと。

・ 会社の規定で労働者に有利な取扱いとすることは、法律を上回る措置として差し支えありません。

例:
申出期限を一律「1週間前」とする
申出期限を過ぎても希望どおりの日から休業させる
休業回数を増やす
2回分割する場合も、まとめて申出しなくてもよいとする 等

・ 育児休業給付や社会保険料の免除は別途要件があります。以下のお問い合わせ先へご確認ください。
育児休業給付の問い合わせ:ハローワーク
社会保険料の免除の問い合わせ:年金事務所、健康保険組合など

[2]出生時育児休業(産後パパ育休)の申出期限を1か月前までとする労使協定

出生時育児休業(産後パパ育休)の申出期限は原則2週間前です。
ただし、次の1、2を労使協定で定めることにより、現行の育児休業と同様に1か月前までとすることができます。

1 雇用環境の整備等の措置の内容(法律上の義務である雇用環境整備措置を上回る措置)

2 出生時育児休業(産後パパ育休)の申出期限(2週間超~1か月以内に限る)

上記1の「雇用環境の整備等の措置」は、次の①~③の全てです。自社の状況を踏まえた具体的な措置の内容を労使協定に定めてください。

① 次に掲げる措置のうち、2つ以上の措置を講ずること。

ア 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する研修の実施

イ 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

ウ 自社の労働者の育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)取得事例の収集・提供

エ 自社の労働者へ育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

オ  育児休業申出をした労働者の育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置

② 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の取得に関する定量的な目標(1)を設定し、育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の取得の促進に関する方針を周知すること。

③ 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置(2)を講じた上で、その意向を把握するための取組(3)を行うこと。

⑴ 定量的な目標は、数値目標であり、育児休業のほか、企業独自の育児目的休暇を含めた取得率を設定することも可能ですが、少なくとも男性の取得状況に関する目標設定が必要です。

⑵ 妊娠・出産の申出があった場合に意向確認の措置を行うことは、この労使協定の締結にかかわらず、法律上の義務になります。

⑶「 意向を把握するための取組」は、法律上の義務を上回る取組とすることが必要です。最初の意向確認のための措置の後に、返事がないような場合は、リマインドを少なくとも1回は行うことが必要です(そこで、労働者から「まだ決められない」などの回答があった場合は、未定という形で把握)。

労使協定で「雇用環境の整備等の措置」を具体的に定める例

① 次に掲げる措置のうち、2以上の措置を講ずること。

ア 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する研修の実施

(例)
全従業員に対し、年1回以上、育児休業制度(出生時育児休業含む。以下同じ。)の意義や制度の内容、申請方法等に関する研修を実施すること。(注)

イ 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する相談体制の整備(相談窓口設置)

(例)
育児休業に関する相談窓口を各事業所の人事担当部署に設置し、事業所内の従業員に周知すること。

(例)
本社人事労務部門にて育児休業に関する相談を受け付けることとし、定期的に全従業員に相談先メールアドレスを周知すること。

ウ 自社の労働者の育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)取得事例の収集・提供

(例)
四半期に1回、育児休業取得体験談や取得時の上司・同僚の反応、職場で行った具体的な育児休業取得促進の方法等をメールで紹介すること。

(例)
半年ごとに育児休業取得者と子どもが生まれる従業員の座談会を開催し、体験談等他の従業員の参考になる情報を社内報で紹介すること。

エ  自社の労働者へ育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

(例)
当社の育児休業制度をまとめた冊子を作成し、育児休業の取得の促進に関する方針とあわせてイントラネットで閲覧できるようにすること。

(例)育児休業制度と育児休業取得促進の方針を記載したポスターを各部署に掲示すること。

オ  育児休業申出をした労働者の育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置

(例)
育児休業取得者の業務を円滑に引き継げるよう、引継ぎ計画を作成し、担当業務の洗い出し、部内の育児休業取得者以外の従業員の業務も含めた業務整理・配分、必要性の低い業務の省略・廃止・外部化等を行うこと。

②  育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の取得の促進に関する方針を周知すること。

(例)
育児休業について、○○株式会社として、毎年度「男性労働者の取得率○%以上 取得期間平均○か月以上」「女性労働者の取得率○%以上」を達成することを目標とし、この目標及び育児休業の取得の促進に関する方針を社長から従業員に定期的に周知すること。また、男性労働者の取得率や期間の目標については、達成状況を踏まえて必要な際には上方修正を行うことについて労使間で協議を行うこと。

③  育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと。

(例)
育児休業申出に係る労働者の意向について、各事業所の人事担当部署から、当該労働者に書面を交付し回答を求めることで確認する措置を講じた上で、労働者から回答がない場合には、再度当該労働者の意向確認を実施し、当該労働者の意向の把握を行うこと。

(例)
育児休業の取得意向確認用の書面を従業員に交付し回答を求めることで確認する措置を講じた上で、一定期間従業員から回答がない場合は、所属長との面談により意向把握を行うこと。

(注)研修の対象は全労働者が望ましいですが、少なくとも管理職については対象とすることが必要です。

[3]出生時育児休業(産後パパ育休)期間における休業中の就業

※労使協定を締結していない場合、出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業はできません。

※ 休業中は就業しないことが原則であるため、休業中の就業を認めないことも可能であり、その場合は労使協定の締結は不要です。

事前準備(前提)
出生時育児休業(産後パパ育休)期間中に就業させることができる労働者の範囲について労使協定を締結しておく

具体的な手続の流れ
労働者が申し出た就業可能日等の範囲内で就業させることを希望する日等について提示し、休業開始予定日前日までに労働者の同意を得る(1)
※労働者から申出があった場合に必ず就業させなければならないものではありません(下記2①参照)。

休業中の就業日数等には上限があります

(1) 休業中は就業しないことが原則です。出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業については、事業主は労働者に対して就業可能日等の申出を一方的に求めることや、労働者の意に反するような取扱いをしてはいけ
ません。

(2) 同意した就業日等について、出生時育児休業(産後パパ育休)の開始予定日の前日までは、労働者は事由を問わず、同意の全部又は一部撤回が可能です。休業開始日以後は、以下の特別な事情がある場合に限り、労働
者が撤回可能です。

① 配偶者の死亡

②  配偶者が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害その他これらに準ずる心身の状況を理由として出生時育児休業(産後パパ育休)の申出に係る子を養育することが困難

③ 婚姻の解消等の理由で配偶者が出生時育児休業(産後パパ育休)の申出に係る子と同居しなくなった

④  出生時育児休業(産後パパ育休)の申出に係る子が負傷・疾病・障害その他これらに準ずる心身の状況の理由で、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になった

留意
事業主が労働者に、出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業の仕組みを知らせる際には、育児休業給付と育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の社会保険料免除について、休業中の就業日数次第でその要件を満たさなくなる可能性があることをあわせて説明するよう留意してください。

留意
育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)は、子を養育するための休業であるため、子の養育という目的を果たせないような形で休業中に請負で働くことは、休業の趣旨にそぐわないものです。

休業中の就業を行う際の留意点

・ 出生時育児休業給付金

① 給付金の対象となるのは、出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業日数が一定の水準※以内である場合です。

② 出生時育児休業(産後パパ育休)期間中に就業して得た賃金額と出生時育児休業給付金の合計が、「休業前賃金日額×休業日数の80%」を超える場合は、超えた額が出生時育児休業給付金から減額されます。

・ 育児休業期間中の社会保険料の免除

一定の要件を満たしていれば、育児休業期間(出生時育児休業(産後パパ育休)を含む)中の各月の月給・賞与に係る社会保険料が、被保険者本人負担分・事業主負担分ともに免除されます。

① その月の末日が育児休業期間中である場合

② 令和4年10月以降は

・ ①に加えて、同一月内で育児休業を取得(開始・終了)し、その日数が14日以上の場合、新たに保険料免除の対象とします。

・ ただし、賞与に係る保険料は連続して1か月を超える育児休業を取得した場合に限り免除します。

令和4年10月以降に開始した育児休業期間中の社会保険料免除の要件を判断する際、「14日以上」の日数には、出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業の仕組みで、事前に事業主と労働者の間で調整した上で就業した日数は含まれません。

育児休業給付の問い合わせ先:ハローワーク
社会保険料免除の問い合わせ先:年金事務所、健康保険組合など

FAQ(よくある質問と回答)

Q 法改正後は、子の出生後8週以内は4週間までしか休業を取得できなくなるのですか。

A 違います。現行(通常)の育児休業は、改正後も取得できます。
改正後は、現行の育児休業に加えて、出生時育児休業(産後パパ育休)が創設されます。子の出生後8週以内の期間は、労働者が選択し、新制度と通常の育児休業のどちらも取得できるようになります。

Q 出生時育児休業(産後パパ育休)は、男性だけが取得できるのですか。

A 出生時育児休業(産後パパ育休)の対象期間(子の出生後8週以内)は、出産した女性は通常産後休業期間中なので、この新制度の対象は主に男性ですが、女性も養子の場合などは対象となります。

Q 現行のいわゆる「パパ休暇」(子の出生後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合には再度取得可)はどうなりますか。

A 現行のいわゆる「パパ休暇」は、今回の改正に伴いなくなり、出生時育児休業(産後パパ育休)と、育児休業の分割取得に見直されます。

Q 子の出生後7週~ 10週の休業の申出があった場合、出生後7~8週は自動的に出生時育児休業(産後パパ育休)になりますか。または、子の出生後8週のうち4週までの休業は全て出生時育児休業(産後パパ育休)として取り扱うよう労使で取り決めてよいでしょうか。

A 育児休業の申出と出生時育児休業(産後パパ育休)の申出はそれぞれ別の権利として労働者に付与されるものです。
そのため、「産後○週間以内の期間についての休業の申出は出生時育児休業(産後パパ育休)の申出とする」といった自動的・一律の取扱いはできません。また、労使協定等でそのような取扱いとすることを事前に取り決めることもできません。
仮に、労働者から、育児休業または出生時育児休業(産後パパ育休)のどちらか不明な申出が行われた場合には、事業主はその申出をした労働者にどの申出であるかを確認してください。

Q 出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業は、労働者が希望すればいつでもできるのですか。

A 出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業は、労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主の合意した範囲内で、事前に調整した上で休業中に就業することができるようにするものです。

Q 出生時育児休業(産後パパ育休)期間中に就業する場合、契約上の勤務時間以外の時間を労働者が申し出てもよいのでしょうか。(勤務時間外の夜間の2時間でテレワークであれば勤務可能など。)

A 出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業可能な時間帯等の申出は、所定労働時間内の時間帯に限って行うことができます。所定労働時間外の時間帯について、労働者は就業の申出を行うことはできません。

Q 出生時育児休業(産後パパ育休)中に就業させることができる者について労使協定で定める際、「休業開始日の○週間前までに就業可能日を申し出た労働者に限る」といった形で対象労働者の範囲を規定することはできますか。

A ご質問のような形で対象労働者の範囲を定めることはできます。

Q 今回の改正で、「パパ・ママ育休プラス」(両親ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達する日までの間の1年間、育児休業を取得可能)はなくなりますか。

A 「パパ・ママ育休プラス」はなくなりません。1年間の計算は、「出生日以後の産前・産後休業期間の日数」+「育児休業(出生時育児休業(産後パパ育休)を含む)を取得した日数」になります。

3 育児休業の分割取得など育児休業の改正内容

[1]1歳までの育児休業

義務
1歳までの育児休業は分割して2回取得可能になります。
出生時育児休業(産後パパ育休)とは別に取得できます。

(1) 出生時育児休業(産後パパ育休)とは異なり、2回分割する場合もまとめて申し出る必要はありません。

(2)1歳6か月、2歳までの育児休業は分割できません(現行と同じ)。

(3) 分割化に伴い、休業開始予定日の繰上げ変更、休業終了予定日の繰下げ変更も、1回の休業につき、繰上げ1回、繰下げ1回ずつ可能です。

(4) パパ休暇は令和4年9月30日で廃止されます。(出生時育児休業(産後パパ育休)と育休の分割取得に見直されるため)

パパ休暇と育児休業分割取得の経過措置

[2]1歳以降の育児休業

義務
1歳以降の育児休業の開始日の柔軟化により、1歳以降の育児休業期間の途中で夫婦で交代することが可能になります。

保育所に入所できない等の理由で1歳以降に延長した場合の育児休業開始日について

義務
以下の特別な事情がある場合は、1歳以降の育児休業の再取得が可能です。
(現行は、1歳以降の育児休業の再取得はできません。)
・ 他の子の産前・産後休業、出生時育児休業(産後パパ育休)、介護休業又は新たな育児休業の開始で育児休業が終了した場合で、産休等の対象だった子等が死亡等したとき

1歳以降の育児休業の申出期限

(1) 子の1歳到達日の翌日(1歳の誕生日)、1歳6か月到達日の翌日から休業することを希望する場合は2週間前までに申し出る必要があることは現行と同じです。

(2) 各期間の途中で配偶者より後に取得するとき等は、以下の場合は労働者の申出どおりの日から休業させなければなりません。

① 申出が1歳到達日以前、1歳6か月到達日以前の場合は、休業開始予定日の2週間前までに申出があった場合

②申出が1歳到達日後、1歳6か月到達日後の場合は、休業開始予定日の1か月前までに申出があった場合

(3) 申出が遅れた場合、事業主は、労働者が休業を開始しようとする日以後申出の翌日から起算して、以下の日までの間で休業を開始する日を指定することができます。

① 申出が1歳到達日以前、1歳6か月到達日以前の場合は、2週間を経過する日(申出日の属する週の翌々週の応当日)

② 申出が1歳到達日後、1歳6か月到達日後の場合は、1か月を経過する日(申出日の属する月の翌月の応当日)

※ パパ・ママ育休プラスにより、育児休業終了予定日が1歳到達日後の場合は、「1歳到達日」を「1歳到達日後の本人又は配偶者の育児休業終了予定日」と読み替える。

FAQ(よくある質問と回答)

Q 育児休業について2回まで分割取得が可能になるとのことですが、出生時育児休業(産後パパ育休)とあわせた場合、1歳までの間に4回まで取得可能になるということですか。

A そのとおりです。

Q 出生時育児休業(産後パパ育休)については、2回に分割して取得する場合には初めにまとめて申し出なければならないとのことですが、通常の育児休業についても、2回に分割して取得する場合にはまとめて申し出ないといけないのですか。

A 通常の育児休業については、まとめて申し出る必要はありません。

・ 会社の規定で申出期限を一律「1週間前」としたり、申出期限を過ぎても希望どおりの日から休業させる、休業回数を増やす等、労働者に有利な取扱いとすることは、法律を上回る措置として差し支えありません。

・ 育児休業給付や社会保険料の免除は別途要件があります。以下のお問い合わせ先へご確認ください。

育児休業給付の問い合わせ:ハローワーク
社会保険料の免除の問い合わせ:年金事務所、健康保険組合など

Ⅲ 令和5年(2023年)4月1日施行の内容

1 育児休業取得状況の公表の義務化

義務
常時雇用する労働者が1,000人を超える事業主は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられます。

(1)「 常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指すものであり、次の①又は②に該当する者は常時雇用する労働者となります。

①期間の定めなく雇用されている者

② 過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者
(一定の期間を定めて雇用されている者又は日々雇用される者で、その雇用期間が反復更新されて、事実上①と同等と認められる者)

(2) インターネットの利用その他適切な方法で、一般の方が閲覧できるように公表してください。自社のホームページ等のほか、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表することもおすすめします。

(3)育児休業等とは、育児・介護休業法に規定する以下の休業のことです。

・法第2条第1号に規定する育児休業(出生時育児休業(産後パパ育休)を含む)

・ 法第23条第2項(所定労働時間の短縮の代替措置として3歳未満の子を育てる労働者対象)又は第24条第1項(小学校就学前の子を育てる労働者に関する努力義務)の規定に基づく措置として育児休業に関する制度に準ずる措置を講じた場合は、その措置に基づく休業

出生時育児休業(産後パパ育休)とそれ以外の育児休業等を分けて割合を計算する必要はなく、出生時育児休業(産後パパ育休)も含めた育児休業等の取得者数を計算すればよいものです。

(4) 育児を目的とした休暇制度とは、目的の中に育児を目的とするものであることが明らかにされている休暇制度(育児休業等及び子の看護休暇は除く)です。労働基準法上の年次有給休暇は除きます。

(5) 育児休業を分割して2回取得した場合や、育児休業と育児を目的とした休暇制度の両方を取得した場合等でも、当該休業や休暇が同一の子について取得したものである場合は、1人として数えます。

事業年度をまたがって育児休業を取得した場合には、育児休業を開始した日を含む事業年度の取得、分割して複数の事業年度において育児休業等を取得した場合には、最初の育児休業等の取得のみを計算の対象とします。

(6) 公表する割合は、算出された割合の少数第1位以下を切り捨て、配偶者が出産したものの数(分母)が0人の場合は、割合が算出できないため「-」と表記してください。

【コラム】育児休業取得率の公表

・男性の育児休業取得促進のために、今回、男性の育児休業等取得率の公表が義務付けられました。

・ 育児休業は「子を養育するための休業」であり、男女がともに育児に主体的に取り組むために、労働者が希望するとおりの期間の休業を申出・取得できるよう、事業主は上司・同僚の理解も含めて育児休業を取得しやすい雇用環境を整備することが重要です。

・ 育児休業を取得しやすい雇用環境整備に取り組んだ結果としての育児休業等取得率を公表いただくという趣旨をご理解いただき、取得率を上げることだけが目的にならないようご留意ください。

Ⅳ 育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止・ハラスメント防止

育児休業等の申出・取得を理由に、事業主が解雇や退職強要、正社員からパートへの契約変更等の不利益な取扱いを行うことは禁止されています。

今回の改正で、妊娠・出産の申出をしたこと、出生時育児休業(産後パパ育休)の申出・取得、出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業を申出・同意しなかったこと等を理由とする不利益な取扱いの禁止が追加されます。

また、事業主には、上司や同僚からのハラスメントを防止する措置を講じることが義務付けられています。

ハラスメントの典型例

育児休業の取得について上司に相談したら「男のくせに育児休業を取るなんてあり得ない」と言われ、取得
を諦めざるを得なかった。

・ 出生時育児休業(産後パパ育休)の取得を周囲に伝えたら、同僚から「迷惑だ。自分なら取得しない。あなたもそうすべき。」と言われ苦痛に感じた。

FAQ(よくある質問と回答)

Q 出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業について、事業主が提示した日時で就業することを労働者に強要することはハラスメントに該当しますか。

A 出生時育児休業(産後パパ育休)期間中の就業は、あくまでも労使協定の締結を前提として、労働者側からの就業可能日等の申出と、それを受けた事業主の提示に対する労働者の同意の範囲内で就業させるものです。

そのため、労働者が休業中の就業可能日等の申出を行わない場合や、事業主の提示した日時に同意しない場合に、上司等が解雇その他不利益な取扱いを示唆したり、嫌がらせ等をしたりすることは、職場における育児休業等に関するハラスメントに該当します。また、労働者からの申出に含まれていない日時を事業主が提示して就業することを労働者に対して強要した場合には法違反にもなります。

Q 妊娠・出産の申出をした労働者に対して個別周知・意向確認のための措置を行う際、上司等が育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)の利用を控えさせるような対応をすることはハラスメントに該当しますか。

A そのとおりです。新たに創設される出生時育児休業(産後パパ育休)についても、上司等が当該制度の利用を控えさせるような言動等をすることは、職場における育児休業等に関するハラスメントに該当するため、留意する必要があります。

Q 育児休業制度等を利用していない労働者に対して、育児休業等の取得率の向上等を目的として、当該制度の利用を強要することはハラスメントに当たりますか。

A 育児休業等の取得率の向上等を目的とする場合などに、法の趣旨を踏まえて、上司等から育児休業等を利用していない労働者に積極的に育児休業等の取得を勧めること自体は差し支えありませんが、当該制度の利用を強制するために、上司等が当該労働者に対して人格を否定するような言動をするなどの精神的な攻撃等をした場合には、パワーハラスメントに該当すると考えられます。

ハラスメント裁判事例、他社の取組など
ハラスメント対策の総合情報サイト
あかるい職場応援団
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

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