ここでは、外国人が個人事業主として業務委託で仕事をする場合、そして、経営・管理ビザについてご説明します。

相談内容

私は「技術・人文知識・国際業務」ビザをもって、日本の会社に勤めていますが、会社からある程度の規模の仕事を委託するので、独立してはと声がかかって来ました。その会社で仕事をしてもよいようですし、収入も増えるので、その業務を受けようかと考えていますが、在留に影響はありませんか。

目次

外国人の個人事業主

個人事業主として業務委託を受ける場合

「技術・人文知識・国際業務」ビザで業務委託時の注意点

「経営・管理」に在留資格変更をする

在留資格「経営・管理」とは

在留資格「経営・管理」の要件

・「事業所の確保」について

・「本邦に居住する2人以上の常勤の職員」について

・「資本金の額又は出資の総額が500万円以上」について

・サイン証明書

外国人の個人事業主

外国人は、在留資格が「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」の場合、在留活動に制限がなく、個人事業主として業務委託で仕事をしても問題ありません。

しかし、「技術・人文知識・国際業務」等就労ビザの外国人が仕事の委託を受けた場合、その会社で同じ業務に従事できるから、委託を受けた本人は収入が増えるならと思いがちですが、委託は同じ会社のもとで行える代わり、現在の雇用契約が打ち切られることを意味します。

上記の外国人の在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、会社との雇用契約があって取得したものです。雇用を打ち切られれば、一種の解雇となります。

また委託を引き受ける場合は、改めて委託契約書を交わすことになりますが、この行為は転職に当たらず、個人事業主として、その契約に参加することになります。委託業務を引き受けることは可能ですが、現在の「技術・人文知識・国際業務」では、在留が不安定になる恐れがあります。

個人事業主として業務委託を受ける場合

在留許可の可能性と言う観点から、業務委託契約の場合は、雇用契約の場合に比べ、低くなります。これは、業務委託契約の場合は、活動の安定性がやや低くなると評価されるためです。つまり、許可後も継続して当該活動を行い続けられる見込みが低く評価されるということです。

業務委託契約とする場合には、委託された業務を行う事務所の規模等は特に問われないものの、業務委託報酬は年間で300万円程度以上が望ましいです。なお、在留期間更新申請時において、年間にどれくらいの業務量を受託したかについては、確定申告書等で明らかとなります。

また、業務委託切約の委託期間についても、2~3か月間という短期間であると、安定性に問題あるとして、不許可となる可能性が高いです。ただし、自動的な更新条項があれば許可される可能性はあります。

「技術・人文知識・国際業務」ビザで業務委託時の注意点

社内で行っていた業務を、委託・請負(結果責任あり)として外部に出すことはよくあることですが、社員である者に声をかけ、業務委託する場合が見受けられます。

雇用主側に、社会保険・労働保険等の責任がなくなることや、「技術・人文知識・国際業務」でのシステム開発などであれば同じ会社内の業務が継続するため、外国人も委託契約に理解がないまま、収入が増える場合もあり、承諾することも多く、問題を複雑にします。

一般的に委託は、必要なときに声がかかり、その都度、委託契約を交わすだけですから、便利よく使われる可能性もあります。

「経営・管理」に在留資格変更をする

会社との委託契約に将来的にも継続性があり、次々と委託契約が結べるあるいは他の事業主からも声がかかり、展望があるならば、「技術・人文知識・国際業務」から在留資格変更を行い、在留資格「経営・管理」を取得することも可能です。

「経営・管理」については、二人以上の常勤の職員を雇用するか、又は500万円の資本金を用意し、事務所の設置を行い、全ての準備が整ってから、在留資格「経営・管理」を申請しなければなりません。

出入国在留管理局の審査では、事業としての継続性・安定性を見定め、許可・不許可の判断を行っています。提出書類も多く、決して易しい在留資格変更ではありません。

企業に雇用されていれば、労働者として法律で守られる部分もあり、上記のような件は、ご自分の在留にもすぐ影響が出ることですから、慎重に考えて答えを出しましょう。

在留資格「経営・管理」とは

在留資格「経営・管理」は、以下3種類の在留が認められています。

①外国人若しくは外国法人が本邦で投資している事業の経営・管理に実質的に参画する在留資格であり、外国法人の社長・取締役・監査役の人など役員としての活動が該当します。

②これらの事業の経営者(外国法人)に代わって経営・管理の活動を行う在留資格です。

③日本に直接投資を行い、事業を起こし経営する者
注:日本に支店や事業所を設立し、国外の本店等から転勤で「技術・人文知識・国際業務」の仕事に従事する在留資格は「企業内転勤」です。

在留資格「経営・管理」の要件

申請人が次のいずれにも該当していること。

一. 申請に係る事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること。

二. 申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。

イ. その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。

ロ. 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。

ハ. イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。

三. 申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、事業の経営又は管理について三年以上の経験(大学院において経営又は管理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

・「事業所の確保」について

総務省が定める日本標準産業分類一般原則第二項において、事業所については、次のように定義されています。

①経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていること。

②財貨及びサービスの生産又は提供が人及び設備を有して、継続的に行われていること。

以上2点を満たしている場合には、基準省令の「事業所の確保(存在)」に適合しているものと認められています。

建物は同一の場合でも、2階が住宅スペース、1階を事業所と分かれ、契約上にも使用目的が明確に記されている、あるいは特約で事務所の使用が記載され、事務機器などの設置も万全であるなど、事務所の確保が行われていることが必要です。

また「経営・管理」の在留資格に係る活動については、事業が継続的に運営されることが求められることから、3か月以内の短期間賃貸スペースを利用したり、容易に処分可能な屋台などを利用したりする場合には、基準省令の要件に適合しているとは認められません。

・「本邦に居住する2人以上の常勤の職員」について

日本人か永住・定住等の外国人を雇用し、派遣等の社員でなければ問題ありませんが、雇用契約書や会計上の計算書等の明確な証明書類を提出しなければなりません。

雇用形態は、労働基準法に則した労働時間・給与・社会保険への加入等が求められ、雇用契約書や雇用保険等の証明が必要になります。

・「資本金の額又は出資の総額が500万円以上」について

これらの条件を全て満たした後の、在留申請は時間的にも大変なため、出入国在留管理局も、日本で新規に事業を起こし事務所の確保ができているが、常勤の2人の職員等の準備が行き届かないような状況がある場合、一つの目安として500万円以上の投資が行われていれば差し支えないとしています。

投資額の中には、事務所の経費・社員の給与・事務所の賃貸料も含まれ、継続した年間500万円の投資額という意味合いではなく、経営等が順調で投資額が維持されていれば差し支えないでしょう。

事業の安定については、直近二期の決算状況をみますが、一度失敗すると審査も厳しくなります。

また、新規事業については事業計画書が大切です。

事業計画や損益決算書について、東京都中小企業振興公社あるいは商工会議所等で相談し、綿密な収益の見直しや事業計画の下に、行動へ移すべきでしょう。

・サイン証明書

日本で会社を設立するには、印鑑登録証明書が必要ですが、外国人がこれを用意できない場合は、「サイン証明書」を提出することになります。この「サイン証明書」は、自国の駐日在外公館で申請することができます。