ここでは、技能ビザの必要書類と事例をご紹介します。
技能ビザとは
入管法には、技能について、「日本の公私の機関との契約に基づいて行う、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」と定義されています。
技能ビザで日本に在留している外国人の中で最も多いのがコックさんです。
必要書類(調理師の場合)
1.カテゴリー1に該当することを証明する資料、 または前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(受理印のあるもの、または電子申請の場合メール到達表も添付) |
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2.申請人の職歴を証明する文書 |
①料理人(タイを除く)の場合 a.所属していた機関からの在職証明書(所属機関の名称、所在地) b.公的機関が発行する証明書がある場合は、当該証明書の写し ②タイ料理人の場合 a.タイ料理人として5年以上の実務経験を証明する文書 b. 初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書 c.申請を行った日の直前の1年間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な報酬を受けていたことを証明する文書 |
3.申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料 |
①労働条件を明示する文書 ②日本法人である会社の役員に就任する場合、役員報酬を定める定款の写し、または役員報酬を決議した株主総会の議事録の写し |
4.事業内容を明らかにするいずれかの資料 |
①勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容等が詳細に記載された案内書 ②その他の勤務先等の作成した1に準じる文書 |
5.前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写しが提出できない場合、理由を明らかにする文書 |
①源泉徴収の免除を受ける機関の場合、外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料 ②上記を除く機関の場合、給与支払事務所等の開設届出書の写し及び次のいずれかの資料 a.直近3カ月分の給与所得・退職等の所得税徴収高計算書 b.納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料 |
基準省令には記載されていないが追加で作成したほうが良い資料 (最近の申請では追加資料として求められるケースが多い) |
1.本国会社と日本会社の従業員名簿 日本会社側で外国人労働者がいる場合は、性別、在留カード番号、在留資格、在留期限、担当業務を記載 2.日本勤務先と本国勤務先の画像及び見取り図 3.ウェブサイトがあればその写し |
申請の注意点
コックさんを招聘する技能の在留資格の申請では、本国への電話等による所在及び勤務期間の確認の電話は必ずされますので、その対応はしっかりしましょう。
よくあるケースで、本国で同僚をニックネームで呼び合っていて、本名を知らないということがあります。
確認電話連絡において、「そんな人間は勤務していない」等の返答をされ、不交付になることもあります。
また、最近の申請では、入管はグーグル地図を使って、事業所所在地を確認しますので、申請前にその点も確認しましょう。
そして、雇用する側の日本の料理店も食ベログなどで本当に本国料理専門店であるかを調べられますので、その点も事前にしっかり確認しましょう。
不自然な画像などにも十分なチェックが必要です。
事例1 在籍確認の電話でよくある誤解
入管から、所在及び勤務期間の電話連絡が入った際、電話に出た者が申請人の本名を知らなかったため、そのような人間は勤務していないと返答してしまった為に、在留資格認定証明書が不交付となりました。
申請のポイント
このような事例はコックさんを呼ぶときに非常に多いです。
従って、申請したら店の責任者に在職証明書の写しを保管させ、電話連絡にはその店舗の責任者など適正な人物のみに電話応対させましょう。
責任者不在時には、従業員に「今は責任者がいません。いつならばいますので、その時にかけ直してください。」などと返答させるようにしましょう。
事例2 コックさんなのに職業がミュージシャン
申請人が過去に短期滞在で入国した時、入国カードの職業欄に「ミュージシャン」と記載していました。
そして、そのことが原因となって、コックさんの「在留資格認定証明書交付申請」をした際、不交付となりました。
申請のポイント
入管は、日本に上陸させるに相応しくない人物であるかの確認から、過去の入国カードは確認しているのでしょう。
本国の料理店では、音楽を聴きながら食事を楽しむスタイルの店も多く、申請人は恐らく店舗が忙しくない時は楽器の演奏等もしていたため、気軽に入国カードの職業欄に「ミュージシャン」と記載してしまったのでしょう。
事例3 過去の労使問題も影響する
外国料理店を新規で開設した際、コックさんを本国から招聘し、日本の料理店で勤務することになりました。
しかし、店主はそのコックさんが勤務態度が悪いことを理由に解雇しました。そして、新しく次の人材を本国から呼ぶ認定申請をしたところ、入管から追加資料の提出通知書が来て、雇用保険、労働保険の加入状況を証明する資料及び前回申請人を含めた全職員の賃金台帳を求められました。
資料を揃えて入管に提出しましたが、賃金台帳中以前のコックさんの報酬が安く、今後新たな従業員に対し、十分な報酬が支払われるかに疑義があり、認定不交付となりました。
申請のポイント
労使間問題は、事業者が労働者を雇用する上で重大な課題ですが、一部経営者の中には「外国人だから安く使える」、「使えなかったら別の人材を呼べばいいだろう」と考えている方もなかにはいるのも事実です。
入管も不慣れな外国で働くということに対し、事業者が保護すべきで、使えないから気軽に外国人を入れ替える等の考えは看過できないとの意向でしょう。
外国人を採用する際に、能力や人柄をよく吟味して、使役するという態度ではなく、保護するべき態度で採用すべきです。
この事例で、解雇されたコックさんの給料は、住宅費を天引きされていて手取りで15万円ほどでした。
在留資格審査要領では「通勤手当、扶養手当、住宅手当等の実費弁償の性格を有するもの(課税対象とならないもの)は含みません」とあるため、住宅費は給与に含まれません。
事例4 実務経験の立証
コックさんの職歴で過去に3店舗勤務しており、合計で10年以上で認定申請をしましたが、当時勤務していた料理店のうち1社が潰れていたため、10年以上の職歴を疎明できないとして認定不交付となりました。
申請のポイント
コックさんは少しでも労働条件の良い店に転職するケースが多く、こういった事例も散見されます。
事例5 職歴証明書の発行日がないことにより不交付
コックさんの職歴証明書で勤続期間に、現在も勤務していると記載されましたが、職歴証明書の発行日が記載されておらず、10年以上の職歴を疎明できないとして認定不交付となりました。
申請のポイント
職歴要件の場合、職歴証明書の発行日は必ず確認しましょう。
現在も勤務している場合は、申請日より3カ月以内に発行された文書を提出するようにしましょう。