外国人が、日本人の未成年かつ未婚の実子を親権をもって監護・養育する場合は、一定の要件の下で、定住者(告示外)ビザを申請することができます。

目次

「日本人実子扶養定住」ビザ

⑴「日本人実子扶養定住」ビザの許可要件

⑵「日本人実子扶養定住」ビザの留意点

 父母の婚姻関係について

 親権者について

 永住者等の実子を扶養する場合

 外国人親が生活保護を受けている場合

 日本人父の子に対する認知について

 子供と共に帰国してから再来日する場合

 日本人実子が18歳以上の場合

⑶ 日本人実子を実際に監護養育をしていない場合等

「日本人実子扶養定住」ビザ

外国人が、日本人の未成年かつ未婚の実子を親権をもって監護・養育する場合は、一定の要件の下で、定住者(告示外)ビザを申請することができます。

⑴ 「日本人実子扶養定住」ビザの許可要件

「日本人実子扶養定住」ビザの許可要件は、次のいずれにも該当することです。

① 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

② 日本人との間に出生した子を監護・養育している者であって、次のいずれにも該当すること
 
a 日本人の実子の親権者であること

b 現に相当期間当該実子を監護・養育していることが認められること

⑵ 「日本人実子扶養定住」ビザの留意点

父母の婚姻関係について

日本人との間に出生した子を、離婚・死別後に日本国内において親権をもって監護養育する場合は、日本人との婚姻期間がおおむね3年に満たなくても、「日本人実子扶養」類型として、定住者への在留資格変更が許可される事が多いです。

「日本人実子扶養定住」ビザにおいては、日本人父と外国人母の婚姻関係は要求されません。
実務上では、妻がいる日本人父の愛人として外国人母が出産した実子も対象となります。

親権者について

日本人実子を親権者として監護養育する親が、日本人母ではなく、外国人父であっても、
当該父に対して、「日本人実子扶養定住」類型として、定住者が認められ得ます。

永住者等の実子を扶養する場合

「日本人実子扶養定住」ビザは、永住者や特別永住者の実子を監護養育する外国人親を適用の対象とはしていませんが、
外国人親が、永住者又は特別永住者である配偶者と離婚又は死別して、「離婚定住」類型又は「死別定住」類型に該当する場合には、告示外定住としての定住者が認めら得れます。

外国人親が生活保護を受けている場合

上記⑴①については、外国人親に稼働を困難とする事情があり、当該事情を考慮して、生活保護等が支給されている場合であっても、将来的には稼働の意思を有し、かつ、日本人の実子を監護養育している事実が確認できれば、生計を営むに足りる資産又は技能を有しないとは取り扱われません。

つまり、日本人の実子を親権者として監護養育する外国人親については、独立生計維持能力が充分とまでは言えなくても、定住者の在留資格が認められる可能性があります。

日本人の実子を親権者として監護養育する外国人親には、自活能力が備わっていることが望ましいですが、一時的に公的扶助を受けていることのみをもって、不許可とになるわけではありません。

近い将来、その公的扶助受給状況を脱して、自活能力を備えるに至る予定や計画を、申請理由書に記載することが重要です 。

日本人実子の国籍について

②の日本人実子は、嫡出・非嫡出を問わず、子の出生時点において、その父又は母が日本国籍を有している者を言います。実子の日本国籍の有無は問われません。

日本人父の子に対する認知について

日本国籍を有しない非嫡出子については、日本人父から認知されていることが必要です。
日本人の父により生後認知を受けているものの、その認知が日本人の実子の出生から相当期間の後になされている場合は、
日本人の実子の出生から認知に至る事情、その間の交流状況、認知の届出が遅延した理由等について審査されます。

「監護・養育」について

②bの「監護・養育」とは、親権者等が未成年者を監督し、保護することを言います。

一旦、定住者への在留資格変更が許可されても、その後実際に監護・養育している状況でなくなれば、
実子が就労を開始し、又は婚姻して独立た場合を除き、在留期間の更新申請は不許可となる可能性が高いです。

日本人の実子が低年齢である場合には、外国人親の日本における稼働に支障となるため、
当該子を本国の親に預けるという事例が多いことから、日本人の実子の日本滞在予定が継続的なものであるかどうかが審査されます。

日本人の実子が学齢期に達している者で、日本での就学を予定し又は希望している場合には、この教育を受ける権利が尊重・配慮されます。

子供と共に帰国してから再来日する場合

日本における適法在留中に日本人との間で子をもうけ、その親権を有する外国人が、当該実子と共に一旦本国に帰国した後、短期滞在で再来日した上で、「日本人実子扶養類型」として定住者(告示外定住)への在留資格変更を申請する場合も許可される可能性があります。

但し、このような場合は、日本在留中に「日本人実子扶養定住」として定住者の在留資格を取得することができたにもかかわらず、それをせず一旦本国に帰国した理由や、再来日するに至った事情、日本人実子を日本で監護・養育する必要性等を詳細に述べる必要があります。

また、経済的な扶養能力があることも重要ですが、この点については、
例えば、一定期間は日本にいる親族の支援を受けながらその間に実母が定職を見つけ、扶養能力を身に付ける予定であることをもって許可されることがあります。

なお、再来日する際は、「日本人実子扶養定住」 類型としての定住者は、定住者告示外ですので、「在留資格認定証明書」の交付の対象とならず、基本的には短期滞在の在留資格で上陸することにあります。
査証事前協議により、在外公館から「特定査証」の発給が得られることもあります。

日本人実子が18歳以上の場合

日本人の実子が18歳以上の者については、稼働できる年齢に達している事実のみをもって、一律に当該子が日本において、外国人親の扶養を受けて生活するものではないと判断されるわけではありませんが、
日本人の実子と外国人親との家族関係に鑑み、親から物質的又は精神的な扶助を受ける者であるかどうかを慎重に審査されます。

⑶ 日本人実子を実際に監護養育をしていない場合等

日本人の実子の親権を有していても実際に監護養育をしていない場合や、日本人の実子との面接交渉権しか認められておらず親権を有しない場合には、
いわゆる離婚定住ケース又は死別定住ケースにあたらない限り、定住者への在留資格変更は非常に困難です。

ただし、「定住告示」又は「平成8年7月30日付定住通達」に定められた事由と同視べきような特別な事情があるときには、親権を有する子について、自らの手元においての監護養育の事実がなくても、定住者への在留資格変更が許可される可能性があります。

また、親権は有しないものの、面接交渉を確実に実行している場合、定住者への在留資格変更が認められた事例も少ないながらあります。

このような場合には、申請理由書・立証資料をもって以下のことを主張すべきです。

・日本人の実子が安定した生活を営めるようにすること

・幼い子供とその親との関係が人道上十分な配慮を必要とするものであること

・未成年かつ未婚の日本人の実子の親権を有する外国人親が、 当該実子との間に真摯な愛情に基づく実質的に密度の高い交流を有し、 その交流が当該実子の健全な生育にとって必要不可欠であること

告示外定住
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