ここでは、特定技能外国人の採用に当たり、職業紹介事業者を利用する場合についてご説明します。

目次

1.職業紹介事業

2.国外にわたる職業紹介

3.国外の取次機関を利用する場合

4.取次機関に関する申告書

5.国外にわたる職業紹介事業を行う場合の許可条件

6.監理許可を受けた監理団体は許可不要

1.職業紹介事業

日本国内において職業紹介行為が行われる場合(職業紹介行為の一部が日本国内で行われる場合を含む)は、職業安定法に基づく職業紹介事業許可が必要です。

なお、建設業務に係る有料職業紹介は認められていません。

求人情報又は求職者情報を提供するのみで、求人及び求職の申込みを受けず、雇用関係の成立のあっせんを行わない、いわゆる「情報提供」は職業紹介には該当せず、これを業として行う場合にも職業安定法による許可等の手続は必要ありません。

しかし、インターネットによる求人情報・求職者情報提供が広まる中で、情報提供事業者のホームページ上で、求人情報又は求職者情報を閲覧可能にするだけでなく、併せて求職者と求人者との間の双方向的な意思疎通を中継したり、求職条件又は求人条人件に適合する求人情報又は求職者情報を自動的に送信する仕組みとしたりするなど、従来の「情報提供」の態様と大きく異なるものが出てきています。

これらが全て許可の取得が必要な「職業紹介」に該当するものではありませんが、中には「職業紹介」に該当するか否か容易に判断しがたい事例も存在します。

従って、厚生労働省によって「民間企業が行うインターネットによる求人情報・求職者情報提供と職業紹介事業の区分に関する基準」が示されています。

2.国外にわたる職業紹介

国外にわたる職業紹介とは、以下のようなあっせんを行うことをいいます。

・国外に所在する求人者と国内に所在する求職者との間をあっせん

・国外に所在する求職者と国内に所在する求人者をあっせん

職業安定法は、原則として、日本国内で行われる行為に適用されるものです。

しかし、職業紹介については、労働者の保護と国内労働市場の秩序維持を図る観点から規制の必要が高いです。

さらに、国内に及ぼす影響が非常に大きいところから、職業紹介の行為の一部が日本国内で行われる場合については、職業安定法の規制が及ぶものとされます。

3.国外の取次機関を利用する場合

国外にわたる職業紹介(国外からの人材の招聘)を行う場合であって、国外の取次機関を利用する場合には、提携する国外の取次機関を申告し、相手先国に関する書類及び取次機関に関する書類を提出しなければなりません。

具体的には、以下のとおりです。

①相手先国の関係法令及びその日本語訳(相手先国において職業紹介が認められている根拠となる規定に係る部分のみ)

②取次機関との業務分担について記載した契約書その他事業の運営に関する書類及びその日本語訳(業務分担がわかる部分のみ)

③相手先国において、当該取次機関の活動が認められていることを証明する書類(相手先国で許可を受けている場合にあっては、その許可証の写し)及びその日本語訳(相手先国において当該取次機関の活動が認められていることを証明する部分のみ)

4.取次機関に関する申告書

また、許可後に国外にわたる職業紹介を行うことになった場合は、届け出なければなりません。

国外にわたる職業紹介を行う国内の職業紹介事業者が、取次機関の申告(届出)を行わずに業務提携を行っている場合は、届出義務等の違反となり、指導、行政処分及び罰則の対象となります。

なお、職業紹介事業を行おうとする者又は職業紹介事業者は、取扱職種の範囲等を定めたとき、及びこれを変更したときは、届け出なければならないところ、国外にわたる職業紹介を行う場合の相手先国を定めたときは、取扱職種範囲等届出書に、取扱職種の範囲等として記載して届け出なければなりません。

この届出ついては、新規許可又は許可更新の申請を行う際に取扱職種の範囲等を定めたときは、許可申請書の提出に併せて取扱職種範囲等届出書に取扱職種範囲等を記載して届け出ることが必要です。

特定技能雇用契約の成立をあっせんする職業紹介事業者がある場合及び職業紹介事業者があっせんを行うに際し、情報の取次ぎを行う者がある場合は、それぞれ、在留資格認定証明書交付申請書の所属機関等作成用の「2(13)」欄及び「21)」欄に記入しなければなりません。

当該取次機関が、特定技能制度又は技能実習制度に係る二国間取決めに基づき相手国政府が認定した送出機関に該当しない場合は、保証金徴収を行っていないことについて慎重な審査が行われます。

5.国外にわたる職業紹介事業を行う場合の許可条件

①国外にわたる職業紹介を行うに当たっては、相手先国をはじめ、取扱職種の範囲等として届け出た範囲内で職業紹介を行わなければならないこと

②国外にわたる職業紹介を行うに当たっては、入管法その他の出入国関係法令及び相手先国の法令を遵守して職業紹介を行わなければならないこと、

③国外にわたる職業紹介を行うに当たっては、求職者に渡航費用その他の金銭を貸し付け、又は求人者がそれらの金銭を貸し付けた求職者に対して職業紹介を行ってはならないこと

④国外にわたる職業紹介を行うに当たり、取次機関を利用するときは、以下の行為をしてはいけません。

a.相手先国において活動を認められていないもの

b.職業紹介に関し、求職者の金銭その他の財産を管理する行為

c.職業紹介に関し、求職者との間で職業紹介に係る契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他財産の移転を予定する契約を締結する行為(求職者が賠償すべき損害額について、額のいかんにかかわらず一定の金額を定めるものについても含まれる)

※保証金の徴収その他名目のいかんを問いません。

他方で、職業安定法の規定に基づき徴収される手数料や相手先国において、相手先国の法令に基づき徴収される上記以外の手数料、職業紹介とは、直接関連しないサービス(セミナー・講演の受講や渡航のための事務手続の代行等)の料金については、これらに該当しません。

d.求職者に対して渡航費用その他の金銭を貸し付けるものに該当する取次機関を利用してはならないこと

⑤職業紹介に関し、求職者が、他者に保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産を管理され、又は他者が求職者との間で不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結していることを認識して、当該求職者に対して職業紹介を行ってはなりません。

上記の許可基準を満たさない場合は、不許可、不更新となります。

また、許可後に悪質な取次機関の利用が判明した場合は、許可取消の対象となります。

6.監理許可を受けた監理団体は許可不要

なお、技能実習法に基づく監理許可を受けた監理団体は、職業安定法上の許可等を受けなくとも技能実習生(船員職業安定法に係る船員を除く)に限って職業紹介事業を行うとができるなど、技能実習法において、職業安定法の特例等が措置されています。

しかし、技能実習法に基づく監理許可も受けていたとしても、職業安定法上の許可を受け又は届出を行っていない場合には、特定技能外国人に係る雇用関係の成立のあっせんを行うことはできません。