特定技能外国人の在留資格該当性は、「特定産業分野該当性、業務区分該当性、受入機関適合性、契約適合性、支援計画適合性」が求められます。

ここでは、特定技能ビザの要件-受入機関適合性についてご説明します。

目次

1.受入機関適合性

 ⑴受入機関適合性とは

 ・受入れ後の適合性の確保

 ・適合性の確保ができなければ、不法就労となる

 ⑵受入機関適合性がない特定技能所属機関での就労

 ・資格外活動罪

 ・不法就労助長罪

 ・受入機関適合性がなくなった場合、届出が必要

2.法務大臣による所属機関の指定

 ・所属機関を異にする転職の場合は14日以内に届出

3.派遣形態

1.受入機関適合性

⑴受入機関適合性とは

在留資格「特定技能」について、入管法は次のように定めています。

「本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う、特定産業分野であつて法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める熟練した技能を要する業務に従事する活動」

この「雇用に関する契約」(特定技能雇用契約)は、入管法の規定に適合するものに限られ、特定技能雇用契約の相手方となる「本邦の公私の機関」は、特定技能基準省令で定める基準に適合するものでなければなりません。

これが受入機関適合性です。

なお、特定技能雇用契約の相手方となる「本邦の公私の機関」は、法人等の団体に限らず、個人も含まれます。

出入国在留管理庁は、在留諸申請に係る審査において、特定技能所属機関に求められる受入機関適合性を確認します。

・受入れ後の適合性の確保

また、受入れ後においては、特定技能所属機関が受入機関適合性を維持し続けているかを四半期ごとの定期の届出等により確認するとともに、必要に応じ、指導・助言、報告徴収や立入検査、改善命令等の措置を講じることにより、特定技能所属機関の受入機関適合性を確保することとしています。

・適合性の確保ができなければ、不法就労となる

特定技能外国人の受入れ後、特定技能所属機関が受入機関適合性を満たさなくなった場合は、当該機関で受け入れられている特定技能外国人はその全員が当該機関で引き続き受け入れられなくなります。上記のとおり、受入機関適合性のない受入機関での就労は、不法就労となるからです。

そのため、当該機関は、就労継続を希望する特定技能外国人に転職支援を行うこととなります。

受入機関適合性がない機関が、特定技能基準省令が定める基準に適合しないことを免れるために、別の機関を設立したような場合は、実質的に同一の機関であると評価して、受入機関適合性の有無を判断されることがあります。

⑵受入機関適合性がない特定技能所属機関での就労

・資格外活動罪

受入機関適合性がない特定技能所属機関での就労は、在留資格「特定技能」に係る在留資格該当性がない不法就労として、当該特定技能外国人において、受入機関適合性がないことの認識・認容(故意)がある限りは、資格外活動罪が成立します。

もっとも、受入機関適合性がないことについて特定技能外国人自身に帰責性がない場合は、当該外国人を立件すべきでないのは当然です。

・不法就労助長罪

特定技能外国人にこのような不法就労活動をさせた者には、特定技能外国人に資格外活動罪の故意(受入機関適合ないことの認識・認容)がなかったとしても、客観的に入管法において定義される不法就労活動にあたる以上は、不法就労助長罪が成立します。

事業主は、過失がないときを除き、外国人の活動が不法就労活動にあたることを知らないことを理由として不法就労助長罪の処罰を免れることはできません。「過失」とは、確認に当たって尽くすべき手段を全て尽くさなかったことを意味します。

受入機関適合性は事業主自らに係ることですので、自らが受入機関適合性がない状態であること(それゆえ特定技能外国人の就労が不法就労活動にあたること)を知らないことにつき、過失がないということは、基本的に想定されません。

従って、例えば、労働、社会保険又は租税に関する法令に違反している状態で、特定技能外国人に就労させている受入機関には、受入機関適合性がない状態で就労(在留資格該当性のない不法就労)させている以上、それ自体で不法就労助長罪が成立します。

在留資格「特定技能」については、許可を受けた時点以降も、特定技能基準省令等が規定する基準に適合し続けなければ、在留資格該当性がないことになることには注意が必要です。

・受入機関適合性がなくなった場合、届出が必要

特定技能所属機関は、受入機関適合性がなくなった場合には、受入困難に係る届出を14日以内に行わないならず、これを怠った場合には過料に処せられます。

また、特定技能所属機関は、雇用する特定技能外国人について、出入国又は労働関係法令に関する不正行為等を認知した場合には、出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為(不正行為)に係る届出を14日以内に行わなければならず、これを怠った場合も過料に処せられます。

特定技能所属機関は、入管法、労働法、社会保険法及び租税法に精通した専門の弁護士等から、継続的な助言指導を受けるようにするなどして、コンプライアンスの徹底が求められます。

2.法務大臣による所属機関の指定

法務大臣は、個々の特定技能外国人ごとに、旅券の指定書を交付し、特定技能雇用契約の相手方となる「本邦の公私の機関」を指定します。

よって、特定技能外国人が転職して雇用契約の相手方となる機関(所属機関)が変更する場合は、たとえ指定された特定産業分野に変更がなかったとしっても(指定された特定産業分野内での転職であったとしても)、在留資格変更手続が必要となります。

・所属機関を異にする転職の場合は14日以内に届出

所属機関を異にする転職の場合は、特定技能外国人が、旧所属機関の退職から14日以内に、契約終了の届出(所属機関に関する届出)を行った上で、在留資格変更許可を受ける必要があります。

そして、旧所属機関は、特定技能雇用契約の終了に係る届出、支援計画変更に係る届出(支援を行っている1号特定技能外国人数が変更になるため)、及び離職に係る届出(外国人雇用状況の届出)を行わなければなりません。

さらに、当該特定技能外国人について、登録支援機関との間で支援全部委託契約を締結していた場合は、当該外国人の退職によって同契約が終了するので、支援全部委託契約に係る届出(支援全部委託契約の終了)も行わなければなりません。

加えて、建設分野にあっては、国土交通大臣に対する報告も必要です。

特定技能外国人が、転職して所属機関が変更したにもかかわらず、在留資格変更許可を受けないまま就労することは、たとえ特定産業分野該当性及び業務区分該当性がある業務に従事しているとしても、在留資格「特定技能」に係る在留資格該当性がない不法就労として、資格外活動罪が成立します。

3.派遣形態

入管法は、派遣形態を認める場合であっても(現時点では農業分野及び漁業分野のみ)、派遣元となる特定技能所属機関については、通常の特定技能所属機関に係る基準(受入機関適合性)に加え、当該特定産業分野に係る業務又はこれに関連する業務を行っている者であること等の、特定技能基準省令で定める基準に適合しなければならないこととしています。

さらに、派遣先についても、特定技能基準省令で定める基準に適合しなければならないこととしており、これらにより適正を確保する仕組みとしています。