外国人が入管法第5条に該当する場合、日本への上陸が拒否されます。具体的にどんな外国人が該当するかをご説明します。
目次
入管法5条
公共の負担となる者(3号)
貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者
公共の負担となるおそれのある外国人の上陸を拒否するための上陸拒否事由です。
貧困者、放浪者、重症患者で治療費の支払能力を有しない者等が該当します。
犯罪歴がある者(4号)
日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。ただし、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない。
過去に犯罪を犯した反社会性の強い外国人の上陸を拒否するための上陸拒否事由です。
不定期刑の場合は、その長期が1年以上であることを要します。
併合罪で主文が2つ以上ある場合は、各主文の刑によります。
「刑に処せられた」とは
「刑に処せられた」とは、歴史的事実として刑に処せられたことをいいます。刑の確定があれば足り、刑の執行を受けたか否か、刑の執行を終えているか否かを問いません。
従って、「刑に処せられたことのある者」には、以下の者を含みます。
・ 執行猶予期間中の者
・執行猶予期間を無事経過した者
・刑法の規定により刑の言渡しの効力が消滅した者
・恩赦法の規定により刑の言渡しの効力が消滅した者
政治犯罪について
政治犯罪については、処罰国でその行為に反社会性が認められても、日本国にとっては必ずしも反社会性が認められない場合があります。
純粋政治犯罪以外の政治犯罪、例えば、政治的目的から出た行為であっても、殺人、放火等の普通犯罪を構成するものは、ここにいう「政治犯罪」には該当しません。
違法薬物に関わった者(5号)
麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する日本国又は日本国以外の国の法令に違反して刑に処せられたことのある者
麻薬や覚せい剤等、違法薬物の使用に対する用法規制として、外国人を通して違法薬物の使用が日本社会に広がることを防止するための上陸拒否事由です。
「刑に処せられた」とは、歴史的事実として刑に処せられたことをいいます。
刑の確定があれば足り、刑の執行を受けたか否か、刑の執行を終えているか否かを問いません。
従って、「 刑に処せられたことのある者」には、以下の者も含みます。
・執行猶予期間中の者
・執行猶予期間を無事経過した者
・刑法の規定により刑の言渡しの効力が消滅した者
・恩赦法の規定により刑の言渡しの効力が消滅した者
売春に関わった者(7号)
売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接に関係がある業務に従事したことのある者(人身取引等により他人の支配下に置かれていた者が当該業務に従事した場合を除く。)
売春その他売春に直接に関係がある業務に従事したことのある外国人の日本社会に害を及ぼす危険性を考慮し、上陸拒否事由としたものです。
その者が刑に処せられたか 否か、更生しているか否かを問いません。
なお、「売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供」を行った者については、その従事の回数等の事情を問うことなく上陸拒否事由に該当します。
上陸拒否期間が経過していない者(9号)
次のイからニまでに掲げる者で、それぞれ当該イからニまでに定める期間を経過していないもの
イ 第六号又は前号の規定に該当して上陸を拒否された者
拒否された日から一年
ロ 第二十四条各号(第四号オからヨまで及び第四号の三を除く。)のいずれかに該当して日本からの退去を強制された者で、その退去の日前に日本からの退去を強制されたこと及び第五十五条の三第一項の規定による出国命令により出国したことのないもの
退去した日から五年
ハ 第二十四条各号(第四号オからヨまで及び第四号の三を除く。)のいずれかに該当して日本からの退去を強制された者(ロに掲げる者を除く。)
退去した日から十年
ニ 第五十五条の三第一項の規定による出国命令により出国した者
出国した日から一年
入管法24条各号の一つに該当して、日本からの退去を強制された外国人、及び出国命令を受けて出国した外国人は、退去強制手続等がとられ、退去強制等の後、一定期間日本上陸を禁止します。
上陸拒否期間
日本から不法残留等を理由に退去強制された者や出国命令を受けて出国した者は、9号により、原則として、一定期間日本に上陸することはできません。
これを「上陸拒否期間」といいます。
具体的な上陸拒否期間は、次のとおりです。
① いわゆるリピーターで、過去に日本から退去強制され、又は出国命令を受けて出国したことがある者の上陸拒否期間は、退去強制された日から10年
② 退去強制された者(①の場合を除く。)の上陸拒否期間は、退去強制された日から5年
③ 出国命令により出国した者の上陸拒否期間は、出国した日から1年
無期限上陸拒否事由
以下の外国人は、「上陸拒否の特例の適用」又は「上陸特別許可」を受けない限り、無期限日本に上陸することができません。
① 日本国の法令に違反して1年以上の懲役又は禁錮等に処せられ、退去強制された者
② 麻薬、大麻、あへん、覚せい剤等の取締りに関する法令に違反して刑に処せられ、退去強制された者
「退去命令」と「退去強制」の違い
入管法5条1項9号ロハニが対象とするのは、退去強制された者及び出国命令を受けて出国した者であり、「退去命令」は含まれません。
「退去命令」は「退去強制」手続とは異なります。
従って、退去命令を受けたとしても、「退去強制された者に適用される5年間の上陸拒否期間」は適用されません。
ただし、麻薬、大麻、覚せい剤等を不法に所持する者、銃砲刀剣類、火薬類を不法に所持する者として退去命令を受けた場には、1年間の上陸拒否期間の適用を受けます。
「退去命令を受けた」ということは、入管法7条1項の上陸のための条件に適合しないことを意味しますすが、直接の上陸拒否事由ではありません。
次回来日の際には、上陸の条件に適合していることを十分に立証する必要があります。
上陸拒否期間経過後の上陸
外国人が過去に退去強制されたものの、上陸拒否期間が経過した場合には、身分系のみならず、就労系の在留資格でも上陸許可が認められる可能性があります。
ただし、退去強制歴のない者に比べ、ハードルは高くなります。
在留資格認定証明書交付申請の際には、正直に過去の退去強制歴を申告した上で、二度と法違反を犯さない旨を誓約すべきです。
日本出国後に刑が確定した者(9号の2)
「9号の2」は、
判決言渡し時において、入管法別表第1の在留資格(活動類型資格)で日本に在留していた外国人に限定されます。
別表第2の在留資格(地位等類型資格)で在留していた外国人は対象となりません。
これは、「地位等類型資格」は、「活動類型資格」に比較して日本国社会との関わりが深いからです。
「9号の2」のポイント
9号の2のポイントは、「その後出国して日本外にある間にその判決が確定」の部分にあります。
例えば、
刑法等の一定の罪により、懲役又は禁錮の判決を受け、刑の執行猶予の言渡しを受けた者が、釈放後、適法な在留資格を有する間で、かつ判決が確定する前に出国して、日本国外にある間に判決が確定場合でも、確定の日から5年間、上陸拒否されるということです。
上陸審査手続