外国人が、日本国内の厚生年金保険適用事業所での雇用関係が継続したまま、海外で勤務する場合、出向元から給与の一部(全部)が支払われているときは、原則、健康保険・厚生年金保険の加入は継続します。
相談内容
私はある会社で働いていますが、今回日本から外国に赴任することになりました。日本の厚生年金も加入して8年近くになりますが、海外に行った場合、この年金の掛金等はどうなるのでしょうか?
なるべく年金として給付を受けたいと思っていますが、外国人が国外から日本の年金に加入できるのでしょうか?
目次
5年以内の海外派遣なら、日本の健康保険・厚生年金保険は継続
日本国内の厚生年金保険適用事業所での雇用関係が継続したまま、海外で勤務する場合、出向元から給与の一部(全部)が支払われているときは、原則、健康保険・厚生年金保険の加入は継続します。
健康保険および厚生年金保険は、適用事業所に勤務する限り、国内における住所の有無を問わず加入します。なお、社会保障協定を結んでいる国で働く場合、外国の社会保障制度の加入が免除される場合があります。
5年以内で一時敵に日本の会社から海外に派遣され、赴任する国が、日本と社会保障協定を締結している国であれば、現在の厚生年金の適用証明書を相手国に提出することにより、5年以内は就労地の適用ルールが免除され、日本の年金を継続することができます。
社会保障協定とは
日本は、年金の掛け捨て回避や二重加入の防止を目指し、二国間相互の社会保障協定の締結を積極的に推し進めています。
国際的な交流が活発化する中、企業から派遣されて海外で働くことや、将来を海外で生活される方が年々増加しています。
海外で働く場合は、働いている国の社会保障制度に加入をする必要がありますが、日本から海外に派遣された企業駐在員等については、日本の社会保障制度との保険料と二重に負担しなければならない場合が生じています。
また、日本や海外の年金を受け取るためには、一定の期間その国の年金に加入しなければならない場合があるため、その国で負担した年金保険料が年金受給につながらないことがあります。
社会保障協定は、以上を踏まえ、以下2点を目的として締結しています。
⑴二重加入の防止
「保険料の二重負担」を防止するために加入するべき制度を二国間で調整する。
⑵年金加入期間の通算
年金受給資格を確保するために、両国の年金制度への加入期間を通算することにより、年金受給のために必要とされる加入期間の要件を満たしやすくする。
2022年6月1日時点における、社会保障協定の発効状況は以下のとおりです。日本は23カ国と協定を署名済で、うち22カ国は発効済です。
(注)英国、韓国、イタリア(未発効)および中国との協定については、「保険料の二重負担防止」のみとなります。
・協定が発効済の国
ドイツ、英国、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、フィンランド、スウェーデン
・署名済未発効の国
イタリア(2009年2月署名)
協定相手国の年金支給の特例
協定相手国の年金を受けるためには、一定の期間、年金制度の被保険者でなければならないという、受給資格要件が定められている場合があります。そのため、加入期間が短いために、年金を受けられず、納めた年金保険料が掛け捨てになってしまうことがあります。すなわち、過去に協定相手国内で一時的に就労したことのある場合は、加入期間が短いために、協定相手国の年金を受給することができない場合があります。
※ドイツの老齢年金の受給資格要件は5年間年金制度に加入していたことですので、上記の場合は2年不足するために、ドイツの老齢年金を受給することができません。
しかし、協定相手国との間では、日本の年金加入期間を協定相手国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、日本の年金加入期間を通算することで、年金受給権を獲得できます。
※ドイツの年金加入期間(3年)は、ドイツの老齢年金の受給資格要件(5年間の年金制度加入)を満たしませんが、日本の年金加入期間を通算すると5年以上になるので、ドイツの老齢年金を受給できることとなります。
・年金加入期間通算とは
年金加入期間通算とは、協定相手国の年金制度の加入期間のみでは、受給資格要件を満たさない場合に、日本の年金制度の加入期間を協定相手国の加入期間とみなし、年金加入期間を通算することにより、協定相手国の年金を受けられるようにするものです。
ただし、両国の年金制度に二重に加入していた期間は、年金加入期間の通算に当たっては、二重にカウントしません。
年金加入期間の通算とは、両国の年金加入期間をまとめての一方の国から年金を受けるという仕組みではなく、それぞれの国で年金受給権を得るための受給資格要件を判断する場合に相手国の年金加入期間を通算するという仕組みです。したがって、年金を受けるときには、両国の年金制度にそれぞれ加入した期間に応じた年金を、それぞれの国から受けることになります。
同様に、障害年金および遺族年金についても受給資格要件(年金加入期間の要件)を満たす必要がある場合は、日本の年金加入期間を通算することができます。
詳しくは年金事務所にご相談ください。
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