外国人が妊娠・出産する場合、産前産後の休暇・育児制度を利用することができます。

要件を満たすと、出産手当金、出産育児一時金、育児休業給付金、出生時育児休業給付金の支給を受けることができます。

相談内容

私は日本の企業で働いていますが、最近妊娠しました。しかし、休んで収入が減った場合、在留期間更新が認められるかなど不安があります。
出産や育児に関する制度は、どのようになっているのでしょうか。

目次

産前産後の休暇・育児休業制度

産前産後の休暇

出産手当金

出産育児一時金

育児休業(育児・介護休業法)

 ①育児休業(育休)

 ②出⽣時育児休業(産後パパ育休)

 ③育児休業中の社会保険料

産前産後の休暇・育児休業制度

産前産後の休暇

まず、出産に関し、労働基準法によって定められた出産時の産前産後の休暇があります(65条)。
産前は出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)から、産後は出産の翌日から数えて8週間の休暇が定められています。

産休時の手当金

この14週間の賃金については、会社の就業規則により保障されている場合もありますが、会社から賃金が支払われない場合は、健康保険の被保険者に対して、出産手当金として標準報酬日額の3分の2相当が支払われます。

出産一時金

また、健康保険から被保険者に対して出産一時金42万円が支給される制度もあります。

育児休業制度

子供が生まれ、出産後8週間で職場復帰が遅れるようであれば、育児休業制度も利用することも可能であり、子供が1歳になるまで、育児休業を会社に申し出ることができます。

育児休業中の賃金は、育児休業(出⽣時育児休業を含む)を取得し、受給資格を満たしていれば、原則として休業開始時の賃⾦の67%(180 ⽇経過後は50%)の育児休業給付を受けることができます。
ただし、休業中に賃金が支払われ、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の場合は、育児休業給付金は支給されません。

また、この間、社会保険料は免除され、給付額には支払ったものとして計算されます。

育児休暇を取ることで月収は減りますが、この間の解雇は不利益な扱いとして、育児・介護休業法(10条)や男女雇用機会均等法(9条)でも禁じています。

会社との契約が有期でない限り、在留更新も問題ないものと考えますが、不安がある場合は会社側にも妊娠の事実を伝え、相談してみてください。

産前産後の休暇

労働基準法65条1項では、「使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。」と定めています。したがって、産前6週間の休暇は、使用者側から与えるものでなく、本人の請求がなければなりません。

同条2項では、「使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。」と定め、産後6週間を強制的な休業であり、就労禁止期間としています。

その後については、本人の希望により医師の認めた仕事に就くことができます。

また、3項では、「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない」と定めています。

出産手当金

会社によっては、就業規則や組合との関係による労働協約により、全額保障しているところもありますが、賃金の支払いがない場合で、妊娠中の女性が健康保険の被保険者であったとき、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前42日(多胎妊娠の場合においては、98日)から、出産の日後56日までの間において、労務に服さなかった期間、出産手当金として、1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する金額が支給されます(健康保険法102条)。

出産育児一時金

健康保険法101条では、「被保険者が出産したときは、出産育児一時金として、政令で定める金額を支給する」と定めています。

支給要件は妊娠4か月以上の出産であること(早産・死産などを含む)、その一時金は現在42万円です。

育児休業(育児・介護休業法)

育休と産後パパ育休は、配偶者が専業主婦(夫)でも取得でき、休業中には、給付の⽀給や社会保険料免除があります。

①育児休業(育休)

配偶者が専業主婦(夫)でも取得できます。夫婦同時に取得できます。
原則、⼦が1 歳に達する⽇(1歳の誕⽣⽇の前⽇)までの間の労働者が希望する期間。なお、配偶者が育児休業をしている場合は、⼦が1歳2か⽉に達するまで出産⽇と産後休業期間と育児休業期間と出⽣時育児休業を合計して1年間以内の休業が可能(パパ・ママ育休プラス)。

また、保育所に入所できないなど一定要件に該当する場合には、申し出ることにより、子が2歳に達するまでの間、育児休業をすることができます。

・育児休業給付金

雇用保険の被保険者の方が、原則1歳未満の子を養育するために育児休業(2回まで分割取得できます)を取得した場合、一定の要件を満たすと、「育児休業給付金」の支給を受けることができます。

支給額
休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)

育児休業期間を対象として事業主から賃金が支払われた場合

②出⽣時育児休業(産後パパ育休)

出⽣時育児休業(産後パパ育休)は男性の育児休業取得を促進する制度です。なお、養⼦の場合等は⼥性も取得できます。
休業できる期間は、⼦の出⽣後8週間以内に4週間までの間の労働者が希望する期間です。

・出生時育児休業給付金

雇用保険の被保険者の方が、子の出生後8週間の期間内に、合計4週間分(28日)を限度として、産後パパ育休(出生時育児休業・2回まで分割取得できます)を取得した場合、一定の要件を満たすと、「出生時育児休業給付金」の支給を受けることができます。

支給額
休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(28日が上限)× 67%

出生時育児休業期間を対象として事業主から賃金が支払われた場合

③育児休業中の社会保険料

育児休業中の健康保険料と厚生年金保険料の労働者負担分会社負担分ともに免除されますが、年金等の給付額は保険料が支払われたものとして計算されます。申請は会社を通じて行います。

事業主から賃金が支払われた場合は、雇用保険料の負担が必要です。