外国人が妊娠・出産する場合、出産育児一時金を申請することができます。
また、親が中長期在留者の子供は、出生して60日間を超えて日本に滞在する場合、入管で在留資格取得許可申請をする必要があります。
相談内容
私は「家族滞在」ビザですが、国民健康保険に加入しています。妊娠したことが分かり、病院に行きましたが、支払が高くて驚きました。これからの生活に少し不安がありますが、出産にはどんな支援があるのでしょうか?
出産後の手続なども教えてください。
目次
妊娠が分かったら妊娠届を行う
妊娠が判明した後に、最寄りの保健所(地域保健福祉センターなど)や市区町村窓口に妊娠届を行ってください。妊娠届により、新しくお母さんになる方たちへの支援が始まります。
出産は、女性にとっては身体的にも精神的にも大変なことですが、病気ではないため、健康保険の対象とはなっていません。そのため、検診料が高くなりますが、妊娠届を行った際に、母子健康手帳、妊婦健康診査受診票及び子育て情報に関する冊子などが入った「母と子の保健バック」が手渡され、次回の検診からは、妊婦健康診査受診票を使用することで、受診料の負担が軽減されます。
病院に行く際は、母子健康手帳を忘れずにお持ちください。母と子供の健康状態を記録するもので、治療や相談の際に必要です。
市区町村の保健センターから、母親学級などのお知らせもありますので、通知があれば、なるべく参加するようにしてください。
出産費
出産費に関しては、国民健康保険から42万円の出産育児一時金が支払われます。手続を行えば、出産育児一時金を直接病院に支払うこともできます。
そして、出産後には、生まれた日を含めて14日以内に出生届を行ってください。医療機関から発行される出生証明書、母子健康手帳、パスポートなどを持参して、届出をすることにより、住民登録が行われ、子供の住民票が作成されます。
そして、市区町村の出生届記載事項証明書若しくは出生届受理証明書の申請を行い、その証明書により、本国の国籍取得手続やパスポートの作成も行います。
子供の在留手続
子供が出生後60日以内に出国するならば、在留資格の取得は必要ありませんが、引き続き滞在する場合は、出生後30日以内に、出入国在留管理局で、子供の在留資格取得許可申請を行ってください。申請により在留カードが発行されます。
外国の方は出産後の手続が多いので、気を付けて行ってください。
外国人の妊娠届
妊娠が判明すれば、なるべく早く最寄りの保健所若しくは市区町村役場に妊娠届を行ってください。
母子健康手帳、妊婦健康診査受診票、産前歯科健康診査受診票、親学級通知、出生通知票、B型肝炎検査受診票などが入った「母と子の保健バック」が渡されます。
検診には受診票を使用することで、受診料が軽減されます。
本来、妊婦健康診査の費用は100%自己負担ですが、検査費の一部を助成する妊婦健康診査受診票を使用して、妊婦健康診査の1回目から14回目分を公費負担で受けることができます。
なお、妊婦健康診査受診票は妊娠確定後の健康診査で使用できるもので、妊娠しているかどうかを調べるための検査にはご使用できません。
また、出産に不安のある方は、「母と子の保健バック」の中にある母親学級に参加してください。育児仲間を作るチャンスになるかもしれません。
出産育児一時金について
出産育児一時金の支給要件は、妊娠4か月以上の出産であること(早産・死産などを含む)ですが、その支給額は現在42万円です。
⑴出産育児一時金の直接支払制度
出産育児一時金の直接支払制度とは、医療機関等が被保険者等に代わって出産育児一時金(上限42万円)の支給申請及び受取を、直接保険者と行う制度です。これにより、被保険者等が医療機関等の窓口で支払う出産費用は42万円を上回った額のみとなります。
※一部の医療機関等で、直接支払制度を導入していない場合がありますのでご注意ください。
※直接支払制度を導入していない医療機関でも、下記の受取代理制度や受領委任払制度が利用できる場合があります。
⑵出産育児一時金の受取り代理制度
出産育児一時金の受取り代理制度とは、直接支払制度を導入していない小規模の医療機関等を出産育児一時金の受取代理人として、事前に申請することで、医療機関等が被保険者等に代わって出産育児一時金を受け取ることにより、出産費用の窓口負担の軽減を図る制度です。
(注)一部の医療機関で、受取代理制度を導入していない場合がありますのでご注意ください。
・対象者
受取代理制度を導入している医療機関等で出産予定の方
・申請期間
出産予定日2ヶ月前から出産日まで
⑶出産育児一時金の受領委任払制度 (窓口申請のみ)
直接支払制度も受取代理制度も導入していない医療機関等で出産される方の世帯主が、出産育児一時金の受領の権利を医療機関等に委任し、出産に要した費用について、42万円を限度とし、保険者が医療機関等に支払う制度です。
⑷本国で出産する場合
外国人の場合は、国外で出産した場合、国民健康保険の資格継続が支給条件となるため、妊娠から出産までの間、在留資格の継続も大切な要素となります。手続は、出産をした妻が日本に帰国後に申請することになっています。
提出書類は、市区町村により違ってきますが、
出産育児一時金支給申請書
保険証
世帯主の印鑑
世帯主の銀行口座がわかるもの
領収明細書
出産した妻のパスポート
出生証明書
出生証明書の訳文
などです。
出国する場合は、住居地の市区町村窓口で確認してください。
外国人子供の出生届と在留手続
日本国内で子どもが生まれた場合、外国人であっても、届出義務があります。
⑴出産後の出生届
病院から「出生証明書」を受け取り、出生届に添付して、14日以内に住居地の市区町村役場に必ず提出してください。
提出資料
・出生証明書(病院発行)
・母子健康手帳
・在留カード又は特別永住者証明書
出生届の後、「出生届受理証明書」又は「出生届書記載事項証明書」を申請してください。国籍取得(本国への届出)・パスポート申請に必要となります。
出生届により住民票も作成され、同時に国民健康保険・児童手当・子供医療費助成(15歳まで)の対象となりますので、手続をしてください。
注:出生による経過滞在者(日本で出生し60日以内に出国する場合)も届け出てください。住民票が作成されます。
子の名前について
届書の子の氏名はカタカナで記載します。ただし、父母が中国・韓国等の漢字の使用が可能な国籍の方は正しい日本の漢字を用いて届出することができます。
⑵在留資格取得許可申請(家族滞在の場合)
出生後30日以内に、出入国在留管理局へ出向き「在留資格取得許可申請」を行ってください。子供の出生後60日以内に出国する場合は、在留資格取得許可の申請は必要ありません。
提出資料
・在留資格取得許可申請書 1通
・出生したことを証する書類 1通
・パスポート及び在留カード 提示
・次のいずれかで、申請人と扶養者との身分関係を証する文書
(1) 戸籍謄本 1通
(2) 婚姻届受理証明書 1通
(3) 結婚証明書(写し) 1通
(4) 出生証明書(写し) 1通
(5) 上記(1)~(4)までに準ずる文書 適宜
・質問書 1通
・扶養者の在留カード又は旅券の写し 1通
・扶養者の職業及び収入を証する文書
(1) 扶養者が収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行っている場合
a.在職証明書又は営業許可書の写し等 1通
※ 扶養者の職業がわかる証明書を提出。
b.住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの) 各1通
(2) 扶養者が上記(1)以外の活動を行っている場合
a.扶養者名義の預金残高証明書、又は給付金額及び給付期間を明示した奨学金給付に関する証明書 適宜
b.上記aに準ずるもので、申請人の生活費用を支弁することができることを証するもの 適宜
注:
子供のパスポートが、出生後30日以内に間に合わない場合でも、30日以内に在留資格取得許可申請を行ってください。
外国人の医療・社会保障
- 「公用」ビザ外国人の国民健康保険
- 外国人が長期出国する場合の国民健康保険と国民年金
- 外国人の退職後の健康保険
- 外国人の高額療養費制度の利用
- 外国人が国民健康保険料を滞納した場合
- 外国人の海外での医療保険適用
- 外国人の妊娠・出産・子供の在留手続
- 外国人も利用できる「産前産後の休暇・育児休業制度」
- 外国人も利用できる「入院助産制度と児童手当・乳幼児医療費助成」
- 外国人が出国している場合の「児童手当」
- オーバーステイ外国人の医療費
- 外国人の生活保護について
- 外国人の「年金加入期間が短い場合」どうする?
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- 学生納付特例制度(留学生の国民年金加入)
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