フィリピンで国際結婚をする場合の手続きについて

ここでは、フィリピン人と日本人が、フィリピンにおいて国際結婚する場合の手続きについてご紹介します。

フィリピンは査証免除国ではありません。
法的な配偶者であっても、在留資格がなければ、日本への入国は難しいので、在留資格が得られるまで、日本人配偶者がフィリピンを何度か訪れて交際を続けることが多いです。

出入国在留管理局の審査は、交際の実績を重視しますので、渡航回数が多い方が交流の事実を証明しやすいです。

1.婚姻の実質的成立要件

婚姻適齢
フィリピンの婚姻適齢は、「男女ともに18歳」です。

日本の婚姻適齢は、「男18歳、女16歳」です。

近親婚の禁止
近親婚の禁止について、フィリピンでは「嫡出非嫡出に関わらず、四親等以内の傍系親族間」として規定され、日本より範囲が広いです。
例えば、フィリピンでは、「養子と養親の嫡出子との間」、「養親を同じくする養子同士間」は結婚できません。

一方、日本では、「直系血族又は三親等内の傍系血族間」では結婚できません。たたし、養子と養方の傍系血族との間では結婚ができます。

よって、兄弟姉妹間は結婚できませんが、養子縁組により義理の兄弟姉妹となった者の間では結婚が可能です。

重婚の禁止
フィリピンでは重婚が禁止されていて、重婚した場合、婚姻は無効とないます。

日本では、重婚は取消事由とされています。

再婚禁止期間
フィリピンでは、再婚禁止期間を定めた規定はありません。
ただし、301日以内に再婚した場合には罰金等の規定があります。

この制約は、フィリピン国内で婚姻する場合の障害になるだけではなく、駐日フィリピン共和国大使館においても、婚姻要件具備証明書は10か月と1日待たなければ発行されないので、日本で結婚する場合にも注意が必要です。

日本では、離婚して女性について100日間の再婚禁止期間の規定があります。

2.形式的成立要件

日本人と離婚し、他の日本人と再婚する場合

フィリピンの法律には離婚を認める規定がありません。
それでは、日本人と結婚したフィリピン女性が離婚し、他の日本人と再婚することは可能でしょうが。

婚姻については、日本の法律は次のように定められています。

①夫婦の本国法が同一の場合:「本国法」適用
②夫婦の常居所地法が同一の場合:「常居所地法」適用
③上記①②の法がない場合:「夫婦に最も密接な関係がある地の法 」適用

※但し、夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるとき:「日本法」が適用

つまり、フィリピン人女性と日本人男性は、日本法により離婚をすることができます。

又、フィリピン人女性が本国に帰国していたとしても、夫が日本に常居所を有する日本人であれば、日本法により離婚ができます。

フィリピンの法律では、フィリピン人同士の離婚は認められませんが、国際結婚の場合のみ離婚を認められています。

姻要件具備証明書

フィリピン人女性が、別の日本人男性と再婚する場合、日本で婚姻するには婚姻要件具備証明書が必要となります。
これは、日本に現在在住しているフィリピン国籍者のみに対して発行されます。

3.フィリピンで結婚する場合の手続き

⑴婚姻要件具備証明書の入手(在フィリピン日本大使館(マニラ、セブ、ダバオ))

⑵婚姻許可証の入手(フィリピン人の住所地の市区町村役場)

⑶挙式、婚姻証明書の入手(挙式挙行地の市町村役場又は国家統計局)

⑷婚姻届の提出(日本の本籍地市区町村役場又は在フィリピン日本大使館)

⑴婚姻要件具備証明書の入手

a.日本人の書類
①婚姻要件具備証明申請書

②戸籍謄本(抄本) 1通(発行後3ヶ月以内のもの)

※改製原戸籍又は除籍謄本 1通(発行後6ヶ月以内のもの)

婚姻歴がある場合
婚姻暦がある場合、婚姻要件具備証明書にその事実も記載し、「離婚証明書」を作成しますので、戸籍謄(抄)本に婚姻及び婚姻解消(離婚等)の事実が記載されていることを確認します。
記載されていない場合には、その事実の記載があるまで遡って、改製原戸籍又は除籍謄本も用意します。

初婚の場合
初婚の場合であっても分籍等により、申請者本人が戸籍の筆頭者になっている場合には、過去の婚姻歴が無いことを確認しますので、戸籍が編成された理由(分籍等)の事実が記載されていることを確認します。
記載されていない場合には、その事実が確認出来るまで遡って、改製原戸籍又は除籍謄本も用意します。

③パスポード(コピー不可)

※未成年者の場合:両親等法定代理人の婚姻同意書

b.フィリピン人の書類
フィリピン人の出生証明書謄本 1通(Birth Certificate)
※フィリピン統計局(PSA:旧NSO)又は市役所発行のもの

※印刷が不鮮明で氏名等が確認できない場合は、有効な旅券又は洗礼証明書が必要です。
出生証明書の記載が不鮮明な場合は、有効な旅券、ID、又は洗礼証明書等も用意します。

18歳未満のフィリピン人の婚姻は認められていません。
上記の確認ができない場合、婚姻要件具備証明書は発給されません。

⑶申請人
申請は、婚姻の日本人当事者が出頭して、大使館備え付けの申請書に必要事項を記入の上、上記書類と共に提出して行います。

⑷交付
証明書は申請の翌開館日に交付されます。
本人以外は受け取ることができません。

⑸婚姻要件具備証明書のコピー
ビザ申請や婚姻届提出の際、婚姻要件具備証明書のコピーが必要となるので、多めに保管しておきましょう。

なお、申請の際提出された書類は返却できません。

⑵婚姻許可証の入手

大使館より入手した婚姻要件具備証明書をもって、婚約者の住所地の市区町村役場に婚姻許可証(Marriage License)を申請します。
申請の際の手続きについては、事前に現地の市区町村役場に確認しましょう。

婚姻許可証は、申請者の名前等を10日間継続して地方民事登録官事務所に公示された後、問題がなければ発行されます。
婚姻許可証は、発行後120日間フィリピン国内のどこの地域でも有効です。

⑶挙式、婚姻証明書の入手

①挙式

フィリピンでは、婚姻を挙行できる権限のある者(婚姻挙行担当官:牧師、裁判官等)が法律で定められています。
この婚姻挙行担当官と、成人2名以上の証人の前で、婚姻の宣誓を行い、婚姻当事者と証人が婚姻証明書に署名し、これを婚姻挙行担当官が認証することにより婚姻が成立します。

②婚姻証明書

婚姻後15日以内に婚姻証明書が、婚姻挙行担当官より挙行地のフィリピン市町村役場に送付され、地方民事登記官により登録が行われます。
登録が完了すると、市区町村役場で婚姻証明書の謄本(Certified True Copy of Marriage Certificate)を入手することができます。

この婚姻証明書の謄本は、日本の婚姻届提出の際に必要となります。

⑷婚姻届の提出

婚姻成立後、3ヶ月以内に日本の市区町村役場、又は日本大使館(総領事館)に婚姻の届出をします。
日本で届出る場合は、日本の市区町村役場に提出書類を事前に確認しましょう。

日本大使館に届出る場合

日本に帰国しない為、在フィリピン日本国大使館(セブ、ダバオを含む)に届出る場合、婚姻成立後3ヶ月以内に、大使館備え付けの届出書(2通)に必要事項を記入して、下記書類と共に提出します。

婚姻の事実が日本の戸籍に記載されるまでに2ヶ月程度かかります。

日本大使館に届出る場合の必要書類
(下記2、3の日本語訳文は、2通の内1通はコピーで可)
①戸籍謄本(抄本) 2通

②フィリピン人配偶者の出生証明書及び日本語訳文 各2通

③婚姻証明書、日本語訳文 各2通

④婚姻要件具備証明書写し 1通

⑤婚姻許可証、婚姻許可証申請書の写し 各1通

⑥旅券

4.子供の国籍

結婚した日本人とフィリピン人の間の子が、フィリピンで誕生された場合は、日本の国籍を留保する意思を表示して、出生の日を含めて3ヶ月以内に出生届を届け出なければ、出生の時に遡って日本の国籍を喪失しますので、注意が必要です。