婚姻の無効・取消しについて

外国人が日本人と結婚して、「日本人の配偶者等」のビザを申請する場合、日本の法律について理解する必要があります。

婚姻関係は、財産上の関係とは異なり、無効や取消しの場合でも、遡及的な現状回復は不可能です。
その為、婚姻の無効や取消しができる場合は限定されています。

(1)婚姻の無効

外形上の婚姻はあったが、無効な婚姻であった場合、その婚姻は当初から無効となります。
夫婦関係はなかったことになるので、その間に子があれば、非嫡出子ということになります。

①婚姻無効となる場合

以下の場合、婚姻は無効となります。

a. 婚姻をする意思がないとき

婚姻届を出したとしても、当事者に真の意味での婚姻をする意思がないときは、その婚姻は無効となります。

婚姻意思とは、社会通念上、夫婦共同生活に入る意思をいいます(実質意思説)。

・婚姻意思が要求される時期

婚姻意思が要求される時期は、届書の作成時期から届出受理時迄です。

婚姻の意思をもって婚姻届を作成したが、届出までに婚姻意思がなくなった場合、客観的に翻意が認められる事実があれば、婚姻は無効となります。

b. 婚姻の届出をしないとき

婚姻は届出をしないとき無効となります。

②無効婚姻の追認

婚姻意思がないのに提出された婚姻届は無効となります。
それでは、無効婚姻を当事者が追認することはできるのでしょうか。

判例は、無効婚姻は追認によって、当初から有効な婚姻であったことにになるとしています。

(2)婚姻の取消し

婚姻の取消とは、「一応有効に成立した婚姻を、婚姻が成立当時から有していた瑕疵を理由に、将来に向かって解消させること」をいいます。

①婚姻取消しの効力

a. 婚姻取消には「遡及効」がなく、「将来効」のみがあります。

b. 婚姻によって財産を得た当事者は、婚姻の当時その取消しの原因があることを知らなかったときは、現に利益が存する限度で、受けた利益を返還すればいいです。

c. 知っていたときは、利益の全部を返還しなければならず、相手方が善意であったときは、損害を賠償しなければなりません。

d. その他については、離婚の規定が準用されます。

②婚姻の取消原因

婚姻について、以下の場合は、取消原因となります。

不適齢者の婚姻・重婚・再婚禁止期間中の婚姻・近親婚などの、婚姻の実質的要件に欠ける場合

a. 不適齢婚の場合

・不適齢婚の場合、当事者が適齢に達したときは、取消しを請求することができなくなります。

・不適齢者は、適齢に達した後、3か月間は取消しを請求することができます。
ただし、適齢に達した後に追認したときは、取り消すことができなくなります。

b. 再婚禁止期間中の婚姻について

再婚禁止期間は、父不明の子の出生を防ぐ為の規定です。
従って、前婚の取消し若しくは解消の日から100日を経過するか、又は再婚後に妊娠したときは、取り消すことができなくなります。

③詐欺又は強迫による場合

a. 詐欺・強迫による婚姻は取り消すことができます。

b. 詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3か月を経過した場合や、当該婚姻を追認した場合は、取り消すことができなくなります。

④以上の場合の他は、取り消すことができません。