「技術・人文知識・国際業務」在留資格の概要
ここでは、「技術・人文知識・国際業務」ビザとは何か、その概要についてご紹介します。
1.「人文知識・国際業務」と「技術」の在留資格の統合
「技術・人文知識・国際業務」は、平成26年入管法改正により、「人文知識・国際業務」と「技術」の在留資格を統合してできた在留資格です。
つまり、専門的・技術的分野における外国人の受入れに関し、企業等のニーズに柔軟に対応するため、業務に要する知識等の学術的な区分(文系・理系)に基づく「人文知識・国際業務」と「技術」の区分を廃止し、包括的な在留資格として「技術・人文知識・国際業務」を創設したものです。
しかし、「技術・人文知識・国際業務」に係る上陸許可基準については、法改正前と同じく、従事しようとする業務に必要とされる技術若しくは知識に関連する学歴、又は実務経験が求められます。
つまり、業務と学歴・実務経験との関連性がこのビザの審査基準になります。
現状において、大学等の教育課程は、一般には、大きく文系・理系に分かれています。実際に履修した各科目も大きく文系・理系に分けることが可能です。
また、実務経験についても、一般には、大きく文系・理系に分けることができます。
したがって、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請に際し、許可要件を満たすか否かを判断する場面においては、依然として、従事しようとする業務内容及び学歴・実務経験のいずれについても、文系と理系とに分けて、関連性があるかどうかを判断します。
したがって、ここでは、「人文知識・国際業務」類型と「技術」類型とに分けてご説明します。
法改正により、「人文知識・国際業務」と「技術」の在留資格を統合したことは、以下のことを意味します。
①在留資格該当性が認められる範囲の拡大により、例えば同一社内において文系専門職種から理系専門職種に配置転換があった場合でも、「人文知識・国際業務」から「技術」への在留資格変更手続が不要となります。
②文系的要素と理系的要素の両方を含む学歴・実務経験や業務が判断対象となる場合に、事実上、関連性がやや肯定されやすくなりました。
「技術・人文知識・国際業務」と「企業内転勤」との違い
「企業内転勤」の在留資格は、入管法で「当該事業所において行う」と規定されています。
よって、転勤した特定の事業所でしか活動を行うことができません。当該事業所以外での就労は、違法な資格外活動となります。
それに対し、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、そのような限定はありません。
したがって、許可を受けるに当たって雇用契約等を締結した「日本の公私の機関」の事業所以外の事業所においても、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格該当性が認められる業務である限りは、活動を行うことができます。
具体的には、当初の勤務先を退職し他社に転職した場合や、派遣会社から他の事業所に派遣される場合等です。
2.「人文知識・国際業務」類型の2つのカテゴリー
「技術・人文知識・国際業務」のうち、「人文知識・国際業務」類型は、①「人文知識」のカテゴリーと②「国際業務」のカテゴリーをあわせた、業務を限定し、就労を可能にした在留資格の類型です。
①「人文知識」のカテゴリー
①「人文知識」のカテゴリーは、
経理、金融、総合職、会計、コンサルタント等の学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的知識を必要とする文化系の活動をいいます。
②「国際業務」のカテゴリー
②「国際業務」のカテゴリーは、
翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発等の外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性に基づく一定水準以上の専門的力を必要とする文化系の活動をいいます。
「人文知識」のカテゴリーと「国際際業務」のカテゴリーとでは、許可要件が異なるので、許可要件該当性を基本的には分けて考えます。
「人文知識・国際業務」類型は、大卒等の学歴のある者や一定の実務経験を有する者が、その学修した内容や実務経験に関連した文化系の業務を行う活動であるといえます。
なお、業務は一定水準以上であることを要します。
概念上、①「人文知識」のカテゴリーと②「国際業務」のカテゴリーとに区分されますが、実際には、両者は複合的に絡み合って、人文知識を必要とする国際業務というものは多いのが現実です。
例えば、
・語学を専攻して外国語大学を卒業した者が、「翻訳、通訳」業務を行おうとする場合
・経済学を専攻して大学を卒業した者が「海外取引業務」に従事しようとする場合
上記のいずれも「人文知識・国際業務」類型として、「技術・人文知識・国際業務」が許可されます。
「人文知識・国際業務」類型は、在留資格該当性に加え、上陸許可基準適合性も求められます。
3.「技術」類型
「技術・人文知識・国際業務」のうち、「技術」類型は、日本経済の国際化の進展に対応し、自然科学の分野の専門技術者を外国から受け入れるたのに設けられたものです。
具体的には、
・情報工学の技術・知識を必要とするシステムエンジニア、プログラマー等
・航空宇宙工学の技術・知識を必要とする航空機の整備
・精密機械器具や土木・建設機械等の設計・開発等
上記のような、技術系の専門職に従事する外国人が、この在留資格の類型で在留しています。
「技術」類型に該当する活動は、大学等で理科系の科目を専攻して、又は長年の実務経験を通して修得した一定水準以上の専門技術・知識を有していなければ行うことができない業務に従事する活動です。
「技術」類型は、在留資格該当性に加え、上陸許可基準適合性も求められます。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」のまとめ
⑴【人文知識・国際業務類型】
大卒等の学歴のある者や一定の実務経験を有する者が、その学修した内容や実務経験に関連した文化系の業務を行う活動
業務は一定水準以上であることを要し、その業務に限定して就労可能です。
①人文知識カテゴリー
経理、金融、総合職、会計、コンサルタント等の、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的知識を必要とする文化系活動
②国際業務カテゴリー
翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発る等の外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を必要とする文化系の活動
在留資格該当性+上陸許可基準適合性
⑵【技術類型】
大卒等の学歴のある者や、一定の実務経験を有する者が、その学修した内容や実務経験に関連した理科系の業務を行う活動
業務は一定水準以上であることを要し、その業務に限定して就労可能です。
※「技術・人文知識・国際業務」ビザは、
在留資格該当性+上陸許可基準適合性が求められる。
技術・人文知識・国際業務
- 技術・人文知識・国際業務
- 「技術・人文知識・国際業務」ビザとは
- 「人文知識・国際業務」の二つのカテゴリー
- 「人文知識・国際業務」の就労分野
- 「本邦の公私の機関」とは
- 「人文科学の分野に属する知識を必要とする業務」とは
- 「人文知識・国際業務」と「経営・管理」との関係
- 「人文知識・国際業務」と「興行」との関係
- 「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」とは
- 外国人がホテル・旅館に勤務する場合
- 雇用契約等
- 機関の事業の適正性、安定性、継続性
- 「人文知識・国際業務」の要件-在留資格該当性
- 「人文知識・国際業務」の上陸許可基準
- 「人文知識・国際業務」の学歴要件・実務要件
- 「特定活動」ビザ-留学生の卒業後の就職活動
- 「技術」類型の在留資格該当性
- 「技術」類型の上陸許可基準
- 「技術」類型の典型的事例
- 就労ビザの許可・不許可事例(専門学校卒業)
- 「技術・人文知識・国際業務」ビザの要件、注意点、必要書類
専門学校留学生の就労ビザ
「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請事例
- 事例-就労ビザの許可・不許可事例(専門学校卒業)
- 事例-会社が事業に必要な営業許認可を取得していない
- 事例-過去の申請との整合性が合わない
- 事例-提出書類に疑義があると判断されたケース
- 事例-職務経歴の偽装があると判断されたケース
- 事例-上場企業でもビザ変更が不許可となったケース
- 事例-一流大学を卒業したが、就労ビザが不許可
- 事例-労働基準法違反により就労ビザが不許可
- 事例-日本語を独学して、通訳・翻訳で就労ビザを取得
- 事例-会社の看板の写真に疑義があって、就労ビザ申請が不許可
- 事例-個人事業主が外国人を雇用したケース
- 事例-日本側で許可になるが、現地大使館でビザ発給拒否
- 事例-文系学部出身の外国人をSEとして採用
- 事例-個人事業主が外国人を採用する
- 事例-インターナショナルプリスクール、バイリンガル保育園で外国人を採用
- 事例-ホテル、温泉旅館等で外国人を採用する
- 事例-飲食店等で外国人を採用
- 事例-「技術・人文知識・国際業務」ビザの職務内容と証拠資料
- 事例-建設会社で外国人を採用する
- 事例-海外の通信制大学や放送大学を卒業している外国人
- 事例-海外の短期大学や3年制大学を卒業している外国人
- 事例-ワーキングホリデーの外国人を採用する
- 事例-社団法人、NPO法人等で外国人を採用する
- 事例-入社後数か月間、現場実習をさせたい場合
- 事例-設立したばかりの会社で外国人を採用
- 事例-設立準備中の会社で外国人を採用