「人文科学の分野に属する知識を必要とする業務」とは-「技術・人文知識・国際業務」

ここでは、「技術・人文知識・国際業務」の「人文科学の分野に属する知識を必要とする業務」について詳しくご説明します。

(1) 要求される実際のレベル

「人文科学の分野に属する知識を必要とする業務」とは、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であることを示すものです。
しかし、実務上、その「一定水準」はそれほど高くはありません。単純就労ではなく、それなりの知識やスキルを必要とする業務であることを合理的に立証できれば許可の可能性があります。

ここでは、業務における申請人の非代替性までは求められません。つまり、申請人でなければ当該業務を遂行できないことまでは求められません。

非常に高度の専門性を有するとまではいえない業務を担当させる場合は、審査官から単純就労ではないという評価を受けるために、以下のことを立証することが重要です。

・その業務の遂行には、それなりの知識やスキルを必要とするということ

・そのような知識やスキルを、いつ、どこで、どのように学んだり、身につけたりしたのかということ

(2) カメラマンの業務

実務上、美術系大学や専門学校等で撮影技術を学んだ留学生が、卒業後、カメラマンの業務に従事するとして、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」(「人文知識・国際業務」類型)へ在留資格変更申請することがありますが、不許可となることが多いです。

現状において、例えば、結婚式場のカメラマンの業務は、特別な知識を必要としない単純就労であると断されています。
他方、映画製作会社の撮影業務の場合は、専門知識を必要とする業務と認められ、許可の可能性があります。

(3) 幹部候補として採用され、入社当初現場の単純就労業務をする場合

非常に大きな企業が、新卒者を幹部候補社員として採用し、業務全般を理解させるために、入社当初の一定期間に限り、現場の単純就労業務もさせる場合があります。

このような場合に、入社当初においては現場の単純就労業務も行うことを出入国在留管理局に提出する書面に記載するとすれば、以下のことを明確かつ丁寧に書面に記載しておく必要があります。

申請のポイント

・幹部候補社員としての採用であること

・幹部社員として会社の業務戦略を立案・構築するためには、一定の研修計画に基づき現場の業務を実際に体験して知っておく必要があること

・現場の業務は入社当初の短期間に限られること

・短期間経過後は、人文知識を必要とする専門性ある業務や国際業務に従事させること

・幹部候補社員にふさわしい雇用条件(報酬額等)であること

雇用主は、単純就労が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格該当性がないことを強く認識しておくべきであります。
特に規模の大きくない企業の場合、上記説明を書面で行っても、説明不十分であれば、その必要性や信憑性等を疑問視され、不許可とされる可能性があります。

いずれにせよ、申請人の職務内容については、在留資格変更許可申請や在留資格認定証明書交付申請等の許可要件である在留資格該当性が重要です。
よって、出入国在留管理局に提出する書面において、何を、どのように、どの程度説明するかは最大限に意を尽くすべきです。

(4) 一時的現業業務(在留資格該当性の全体的判断)

① 長期的な判断

ある外国人の活動について在留資格該当性があるか否かは、「在留期間中の活動を全体として捉えて判断」します。
例えば、1日8時間の労働時間のうち、その大半である6時間が現業業務であっても、そのような状態が、付与される在留期間(例えば「3年」)のうちの当初の短期間(例えば1年)に限られる場合には、在留資格該当性があると判断するということです。

② 短期的な判断

業務に従事する中で、一時的に在留資格該当性がない現業業務を行わざるを得ない場面について、それ自体で直ちに入管法上違法と評価するものではなく、結果的に主たる活動になっている場合に、在留資格該当性は否定されます。

例えば、
1日8時間の労働時間のうち、1時間程度、現業業務に従事せざるを得ない日があるとしても、それが当該時点における従たる業務にとどまっているのであれば(1日の労働時間の大半は、一定程度以上の専門性ある業務に従事するのであれば)、在留資格該当性があると判断されます。

企業の業務に従事する場合、様々な業務に従事するのが通常であり、そのような場合に、個々の業務すべてが自然科学の分野に属する技術又は知識を必要とすることではありません。

外国人の業務を全体として見た場合に、当該技術又は知識がなければ、少なくとも業務の主要な部分を遂行できないときには、その業務は、当該技術又は知識を要する業務であるといえます。

「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請事例