「技術」類型の要件-在留資格該当性

ここでは、「技術」類型の要件である「在留資格該当性」について詳しくご説明します。

「技術」類型の在留資格該当性

「技術」類型の在留資格該当性については、入管法で次のように規定されています。

「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動」

※ただし、「教授」、「芸術」、「報道」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「研究」、「教育」、「企業内転勤」、「介護」、「興行」の在留資格に該当する活動は除きます。

1 「理学、工学その他の自然科学の分野」とは

(1)具体的な分野

「理学、工学その他の自然科学の分野」とは、いわゆる理科系の分野であり、具体的には次のとおりです。

数理科学、物理科学、化学、生物科学、人類学、地質科学、地理学、地球物理学、科学教育、統計学、情報学、核科学、基礎工学、応用物理学、機械工学、電気工学、電子工学、情報工学、土木工学、建築学、金属工学、応用化学、資源開発工学、造船学、計測・制御工学、化学工学、航空宇宙工学、原子力工学、経営工学、農学、農芸化学、林学、水産学、農業経済学、農業工学、畜産学、獣医学、蚕糸学、家政学、地域農学、農業総合科学、生理科学、病理科学、内科系科学、外科系科学、社会医学、歯科学、薬科学等の分野。

これは代表的な分野の例であり、「技術」類型の「自然科学の分野」がこれに限られるわけではありません。

(2)人文科学の分野に属する知識を必要とするコンピュータソフトウェア開発

コンピュータソフトウェア開発は、一見すると理科系知識が必要な理科系分野の活動として、「技術」類型にしか該当しえないようにも見えます。
しかし、人文科学の分野の科目を専攻して大学を卒業し、人文科学の分野に属する知識を必要とするコンピュータソフトウェア開発等の業務に従事する場合は、「技術」類型ではなく、「人文知識・国際業務」類型に該当します。

したがって、大卒者等がコンピュータソフトウェア開発に従事したいが、大学等での専攻が理科系の科目ではなく、文化系の科目であるために「技術」類型では申請できない場合、単純に考えてあきらめるのではなく、業務の内容を具体的に精査して、大学等で学修した人文科学の分野に属する知識を必要とする業務であることを立証することにより、「人文知識・国際業務」類型での申請ができないかを検討すべきです。

2 「本邦の公私の機関」、「契約」、機関の事業の適正性・安定性・継続性

⑴「本邦の公私の機関」

①「本邦の公私の機関」具体例

「本邦の公私の機関」には、国、地方公共団体、独立行政法人、会社、公益法人等の法人のほか、任意団体も含まれます。
また、日本に事務所、事業所等を有する外国の国、地方公共団体(地方政府を含む)、外国の法人等も含まれます。

②個人経営の場合

法人格を有しない個人であっても、日本で事務所、事業所等を有し、外国人が在留活動を行うことができるに足る施設及び陣容を有していれば、「本邦の公私の機関」に該当しえます。
しかし、実務上は、機関の事業の安定性、継続性の立証が困難な場合が多いです。

なお、事業主体性を有しない単なる一個人である場合は該当しません。

⑵機関の事業の適正性、安定性、継続性

国、公私の機関以外の機関との契約に基づいて業務に従事する場合は、当該機関の事業が適止に行われるものであり、かつ、安定性及び継続性の認められるものでなければなりません。

上陸許可、在留資格変更許可、在留期期間更新のいずれの場合でも、短期間の在留を認めるのではなく、1年間又は5年間等という、将来の期間にわたって在留を認めることになるので、許可時点以降も申請時における状況が継続することが許可の前提となります。
上陸許可、在留資格変更許可、在留期間更新許可においては、在留資格該当性が要件となっており、許可時点以降も「該当」する状態が継続することが見込まれることが前提となるということです。

したがって、雇用等する機関の事業の継続性、安定性が要求されるます。

適正性は、狭義の相当性の要件を基礎付ける要素として要求されています。機関の事業の適正性、安定性、継続性の立証は全ての案件で重要です。

①機関の適正性

適正性の観点からは、機関が必要とされる許認可を保有していることや違法行為・不正行為を行っていないことが必要です。

例えば、
外国人が、労働者派遣事業を営む企業等へ就職する場合、外国人の予定職務に係る業種について、労働者派遣法に基づく厚生労働大臣の許可を受けている業者(一般労働者派遣事業)、又は厚生労働大臣への届出を行っている業者(特定労働者派遣事業)であることが要件となります。

許認可が必要な業種であれば、許認可を適正に取得していることを立証し、仮に、不正行為等のためにかつて行政指導等を受けたことのある企業であれば、再発防止策を講じ、二度と不祥事は起こさない体制になっていること等を立証しなければならないこともあります。

②機関の事業の安定性及び継続性

安定性及び継続性の観点からは、機関の売上げ、利益、組織の形態(法人か個人か、株式会社かそれ以外か等)、組織規模(従業員数等)、設立年度等が重要です。

「機関」・「契約」の重要ポイント


本邦の公私の機関との契約に基づいて行う

⑴「機関」:

公益法人、民間会社、独立した機関として活動する外国法人の支店・支社、NPO法人、外国人が在留活動を行うことができるに足る施設及び陣容を有している法人格を有しない個人経営を含む。
機関の事業の適正性、安定性、継続性が要件となる。

⑵「契約」:

雇用のほか、委任、委託、嘱託等を含む。
派遣契約の場合は、派遣元(雇用主)の業務ではなく、派遣先において担当する業務内容が、在留資格該当性を満たすものか否かが審査される。

3「自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務」とは

(1)単純就労(現業業務)との限界

「自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務」とは、学術上の素養を背景とする、一定水準以上の業務であることを示すものであり、自然科学分野のいずれかに属する技術、又は知識がなければできない業務であることをいいます。

例1 機械の製作

機械の製作についていえば、機械を設計し、又はその組立てを指揮する活動は、機械工学等の専門技術・知識を要する業務に従事する活動として「技術」類型の在留資格該当性があります。

しかし、単に機械の組立て作業に従事する活動は、「自然科学の分野に属する技術・知識を必要とする業務に従事する活動とは認められませんので、「技術|類型の在留資格該当性はありません。

例2 橋梁の建設

橋梁の建設についていえば、橋梁を設計し、又はその建設工事を指揮監督する活動は「技術」類型の在留資格該当性がありますか、単なる土木作業に従事する活動は該当性がありません。

例3 パソコンの出張サポートや修理

一般にパソコンの出張サポートや修理は、「技術」類型の在留資格該当性がないと判断されることが多いです。

単純就労(現業業務)との限界が問題となる事例においては、将来、指導者的立場になることを前提とした採用であることや、部下が存在するポジションであることが重要となることが多いです。

(2)自動車整備等

自動車整備等の業務は、単純就労(現業業務)との限界事例の一つです。
自動車整備の業務に携わること、又は自動車整備士の国家資格を有することで、直ちに「技術」類型に該当するものではありません。

「技術」類型に該当し、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格該当性が認められるためには、あくまでも、自動車工学の研究対象である自動車の各構成部分の原理、構造、設計及び製造に関する業務又は自動車のメンテナンス業務のうち、「診断」、「点検」等、関連知識をもって判断を行う業務に携わるものであるとが必要です。

自動車整備専門学校を卒業した専門士

自動車整備専門学校を卒業した専門士が整備士として、就職する場合については、実務上、自動車整備士2級以上の資格を有し、資格のない整備工や3級整備士に対する指導・監督を行う業務がその職務に含まれており、かつ、専ら分解、洗浄、部品交換等に従事するものではなく、近い将来整備主任者としt従事することが予定されているときは、一定以上の自然科学分野の学術上の素養を要する業務であるとして「技術」類型に該当します。

車の改造

専ら右ハンドル車を左ハンドル車に改造する作業については、実務上、単純な組立て作業であると評価さ、理学、工学等の自然科学分野の知識及び技術について一定以上の学術上の素養を要する業務ではないとして、「技術」類型に該当しないとされます。

(3)技術営業

自然科学の分野の科目を専攻して大学を卒業し、従事する業務が、技術職そのものでなくとも、
例えば自然科学の分野に属する技術又は知識を要する販売業務(いわゆる技術営業等)、総合職的な業務であれば、「人文知識・国際業務」類型ではなく、「技術」類型に該当します。

(4)「技術」類型と在留資格「技能」の区別

「技術」類型

技術」は一定事項について学術上の素養等の条件を含めて、理論を実際に応用して処理するための能力をいいます。

在留資格「技能

「技能」は一定事項について主として個人が自己の経験の集積によって有している能力を指します。

「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請事例